任天堂、「eスポーツ」と一線 抱えるジレンマ
https://r.nikkei.com/article/DGXMZO3733451003112018000000?unlock=1&;s=0
任天堂は3日、千葉市の幕張メッセでゲーム大会「Nintendo Live 2018」を開いた。子供を含め、公募した約1800人の選手が戦う。
目的は任天堂ファンの拡大。賞金を出してプロ選手を育成するゲーム対戦競技「eスポーツ」とは一線を画す。

「子供のためのゲーム」という理念を貫く一方、業界の変化に遅れがちというジレンマも抱える。


【目立つ子供たちの姿】
賞金は出さず、優勝者や参加者には記念品を渡す。あくまで同社のゲームを楽しむ人を集め、ソフトの魅力を伝えるのが目的だ。
クリスマス商戦を前に、12月にかけて発売する新ソフトの試遊スペースも置いた。

一方、ゲーム業界が推するeスポーツの賞金は高額化の一途だ。
2月には業界団体「日本eスポーツ連合(JeSU)」が発足。選手にプロライセンスを発行し、練習施設の整備や選手育成で、自治体やスポンサーとなる企業を巻き込みながら普及を図る。「幅広いゲームでスター選手を育てるのが重要」(岡村秀樹会長)とする。

JeSUの会員にはゲーム会社を中心に43団体が連ねるが、そこに任天堂の姿はない。
「子供たちが参加できるような環境で広がっていくか注視している」(幹部)。
あくまで子供たちの遊びであるゲームが派生的に金もうけの手段になることへの抵抗もあるようだ。


【理念が裏目になることも】
ただ、「子供のためのゲーム」という理念を徹底する姿勢が裏目に出ている面もある。
任天堂が9月に始めた月額課金でのスイッチ向けのオンラインサービスは、ライバルのソニーの「プレイステーション」から8年遅れた。

ソニーは9月末で3430万人の有料会員を抱え、今期の営業最高益見通しの原動力となっている。
任天堂の出遅れには「子供が買いやすいようにゲームは追加料金不要な買い切りが望ましい」との思いがあったとみられる。

スマートフォン(スマホ)向けゲームでも出遅れた。
マリオの生みの親の宮本茂代表取締役が8月に講演でスマホ向けゲームについて「買い切り型が定着すれば安心してゲームを作れる」
と発言したように、有料電子くじ「ガチャ」で多額を支払う利用者が増える中で、慎重姿勢を崩さなかった。
任天堂はスマホゲームを収益の柱の一つとして育成する方針だが、今でも苦戦が続く。


【まとめ】
eスポーツなど新領域が次々と生まれるゲーム業界で、他社が収益化のノウハウを蓄積した後での巻き返しは難しくなってきている。
任天堂は理念と現実をてんびんにかけながら、柔軟に戦略を変える姿勢も求められそうだ。