※参考までに
・塩野義製薬ワクチンはスパイクタンパク質ベース

本ワクチンは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のスパイクタンパク質(Sタンパク質)を抗原とし、BEVS (Baculovirus expression vector system)と呼ばれる技術を用いて製造する組換えタンパク質ワクチンである。組換えタンパク質ワクチンは、目的の抗原タンパク質だけを大量に生産するため安全であり、その抗原タンパク質を直接投与するため確実な免疫を得ることが期待できる。
抗原の最適化と解析を国立大学法人九州大学で行い、その抗原を株式会社UMNファーマの有するBEVS技術により創製する。創製したワクチンを国立感染症研究所の感染モデル動物を用いて有効性と安全性を検証し、選抜されたワクチンの製造及び開発を塩野義製薬株式会社が行う。
現在のところ2020年内に臨床試験を開始し、2021年の早い段階での承認申請を目指している。


※この記事を読むとワクチン開発のドタバタぶりが良くわかる

・塩野義製薬、組換え蛋白質ワクチンは複数の候補品の免疫原性を評価中(2020.07.28)
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/news/p1/20/07/20/07217/

塩野義製薬は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対して、子会社のUMNファーマが独自に確立したバキュロウイルス・昆虫細胞系を用いた蛋白質発現技術を基盤とした、組換え蛋白質ワクチンの開発を国立感染症研究所と進めている。

UMNファーマが米Protein Sciences(PS)社から導入した季節性の組換えインフルエンザHAワクチン(開発番号:UMN-0502)については、アステラス製薬が承認申請を取り下げた経緯がある。その背景には、製造に用いていた、PS社のヨトウガ(spodoptera frugiperda)由来の昆虫細胞(SF+)株にラヴドウイルス(Rhabdoviridae)のゲノムが挿入されていたことから、医薬品医療機器総合機構(PMDA)が、慎重に審査を行っていたことがある。現状、UMNファーマが使っているバキュロウイルス・昆虫細胞系を用いた蛋白質発現技術(BEVS)はどのようなものか。

時間があれば、最適な抗原は何かを検討したいが、現状、スパイク蛋白質を否定するほどの理由は無いので、スパイク蛋白質を抗原とする。また、BEVSは、昆虫細胞をあらかじめ培養しておき、十分増やしたところにスパイク蛋白質の遺伝子を組み込んだバキュロウイルスを感染させる。ただ、昆虫細胞が増えることと抗原が発現することは別。本来は、どの程度抗原が製造できるか、3年程度かけて検討するが、今回は検討時間が限られるので厳しい部分もある。

【参考】
・UMN、バキュロウイルス・昆虫細胞系に代わる製造技術の整備から出直し(2018.2.19)
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/news/p1/18/02/16/03875/
 UMNファーマは、2018年2月16日、2017年12月期の決算説明会を開催。2017年12月、提携先の米Protein Sciences Corporation(PSC)社とのライセンス契約を解除したことなどを受け、今後のワクチン開発に、バキュロウイルス・昆虫細胞系を用いた蛋白質発現技術(Baculovirus Expression Vector System:BEVS)は使わないと説明した。同社はBEVSに代わる製造技術を整備しながら、資本業務提携した塩野義製薬のための新規のワクチンシーズの探索などを進める。

【参考】
・塩野義製薬株式会社における遺伝子組換え生物等の不適切な使用等について(2014.1.24)
https://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/26/01/__icsFiles/afieldfile/2014/01/24/1343574_1_1.pdf
(1)事実関係 平成25年12月5日、同社医薬研究センターにおいて、過去、遺伝子組換えバキュロウイルス※1を含む実験器具や廃液の一部を、実験後に不活化処理(遺伝子組換え生物等を死滅させる処理)せずに廃棄していた可能性があるとの事案が判明した。※1 本件遺伝子組換えバキュロウイルスは、昆虫細胞に感染するウイルスを宿主とするものであり、哺乳動物等に対する病原性等はなく、P1レベルの拡散防止措置(閉鎖環境の中で遺伝子組換え生物等を扱う際の拡散防止措置として、必要な措置が最も簡易なもの。)で取扱い可能。