「なんだかおウチに帰ってきたみたい!」

安心院はトランスポーターの仕事柄早起きだ。
しかし昨晩ほど気持ち良く眠れたのは久しぶりであった。
(お布団…お日様の匂いがした…きっと…)
布団は予約を入れると自動でクリーニングに回される、しかし安心院が鍵を預けている「誰かさん」が気を利かせてくれたようだ。
屋上で干された布団はやはりクリーニングとは匂いが違うのである。

既に食堂にはそれなりに人がいた、そして…
(…!ドクター!!早起きは三文の徳、だね!)
朝のA定食を受け取った安心院は、何とかして食事中のドクターの視界に入らないか席を探す、そして…

「安心院、おかえり。昨日までお疲れ様だったな。昨日は顔を出せなくて済まなかった。」
安心院はドクターのその一言で、自分の居場所を再確認するのだった。
(おウチに帰ってきたみたい、なんてね!えへへ)



「陰鬱なところですね」
実のところ、この三等客室もランデン修道院より作りは上等であった。
ただしこの階層には自然がない。
屋上には麦畑があると聞く。行ってみたい。藁の上でお昼寝をしたい。
(ブレイズさんに、真剣に謝れば…)
そう、ブレイズは堅物ではない、とアルケットは多くのオペレーターから何度も聞いていたのだ。
ブレイズが気にしていたのは、「余命幾ばくもないオペレーターの幸せな最期に水を刺さないで欲しい」その一点でしかなかった。

しかし今日は無理だろう。
ストレスの溜まったアルケットは昨晩グラニに麦酒のコップを投げつけてしまい、見ていたオペレーターによってあっという間に噂になってしまった。
酔っていたとはいえ負のスパイラルとはこの事である。
「陰鬱なところですね」
ロドスではない、この独りきりの空間が、であった。