「クレー、調子はどうだ?」
机に向かい、絵日記をつけるクレーにジンが声をかける
旅人とどこへ行った、旅人と悪者を懲らしめた、旅人に褒めてもらった━━━
旅人との冒険の内容を記すのが彼女の日課となっていた
しかしこの間、旅人はもう彼女を連れ歩いてはいない
クレーはここのところずっと、存在しない出来事を日記に書き連ねているのだ

「今日も頑張ったんだよ、みてみて!」
クレーが今日の出来事を記したものを示す
その内容は、ウィンドブルーム祭で高得点を取ったクレーを旅人が褒めそやし、旅人の点数アップに向け二人で練習したというもの

「……今日も、頑張ったな」
確かに旅人もこの祭に参加している
しかしクレーに会いに来るどころか、気にかける様子すら微塵もない
クレーのことなど忘れてしまったかのように

「うん!もっと頑張ったら、また……」
ジンの言葉に応えたクレーが、そこまで言って口をつぐむ
クレーも薄々気づいているのだと、ジンは思う

(でないと、あんなことには……)
深夜、錯乱した様子で飛び起きたクレーの姿を思い出す
滝のような涙と汗を流しながら、『クレーのを返して』と泣き叫ぶ彼女を姿を