技術者を大切にーとかまたぞろ馬鹿がいってるが、ジャップ技術者とて馬鹿じゃないので
「大切にって具体的に何をしてくれるの?」と問い返してくることだろう
これはつまり、技術者が反日だから日本企業が労働者を大切にしないからなどというネトウヨお定まりの
抽象的でおセンチメントなお話でもなんでもなくて、極めて古典的なエージェンシー問題なのだ

なぜ(もはや流出する人材も限定的だが)ジャップ技術者が流出するのか?
それは、古今東西、あらゆる組織で見られる「引き抜き行為」同様に、
ジャップ企業で働くことによって得られる利得よりも、引き抜き先で働くことによって
得られる利得の方が十分大きいと当のジャップ技術者が考えているから
これはその企業に将来性がないとか、キャリアに発展性がないとか色々あるだろうが
結局労働の生産性は貨幣賃金によって決まるので、一番大きいのは賃金の問題だろう

一方、プリンシパル(経営者)としては、その技術者の価値を外部労働市場で評価される価格
(=引き抜き企業からオファーされる賃金)よりも低く見積もっているので、
技術者が自然流出する、ということになる

というのは、わかりやすい話で、しかし実際には経営者もまた馬鹿ではないので
労働者の引き抜きを阻止しようと賃金水準を市場価格に近づけようとするだろう
しかし、どうもネトウヨによると相変わらず引き抜かれ続けているようだ
考えられる理由としてはふたつだろう

1. 引き抜かれ続けている現実を認識できないほど経営者が馬鹿
2. 何らかの理由で、賃金水準を上げることができない

二十年も不況やって半導体とエレクトロニクスという稼ぎ頭を共に潰した国なので
経営者が自らの得失を認知できないほど痴呆だという可能性はありうる
が、ネトウヨですら引き抜きを問題視できるので、仮にも一部上場企業の経営者が
それを判断できないというのは、ちょっと考えづらい

なので、答えとしてはたぶん2だろう
つまり、ジャップ企業は、何らかの構造的な問題のせいで、競争的な労働市場で
評価されるような労働者の価格の賃金水準を支払うことができない、と考えられる
具体的には、終身雇用とか年功序列、株式の持ち合いのような日本的な企業慣行が、
そういう慣行を持たない国外のアウトサイダーと比べて賃金水準を低く抑える傾向を
日本企業にもたらしているのだと考えられる

実際、国外大企業の経営者の報酬は日本企業のそれとは比べ物にならないほど高いが、
これは日本国外では経営者の労働市場が整備されていて、経営層の移動が活発だから
内部から昇進したサラリーマンが社長をすることになっているジャップランドでは、
経営者の労働市場なんてものは望みようもなく、彼らはまた英語もできないから
国外にヘッドハンティングされるなんてことは起こりえないが、技術者はそうではない
ジャップ企業がどのような制約を負っていようが、海外は気にしないだろう

逆に言うと、単に技術者を流出させたくないのなら、海外と同じやり方をすればいい
具体的には、終身雇用とか年功序列とか株式の持ち合いとかをやめて、もっと労働と
資本市場を自由化すれば、海外の賃金水準に近い金額を技術者に払えるようになるだろう
もちろん、日本的な企業雇用慣行にもそれなりの合理性はあるので結局のところそれは
どちらがより望ましいかというトレードオフの問題でしかない
が、「技術者を大切にしろ」と抽象的に宣ってる手合に限っては、そのトレードオフを
正確に認識していないようにみえる