具体的なメリットを示してSIEにプレッシャーかける

ソニー・インタラクティブエンタテインメント(以下、SIE)は、2018年9月よりPS4のクロスプレイ機能のオープンベータを実施している。
それまでSIEは、PS4とPC/モバイルとのクロスプレイは認めていた一方、他社コンソールに対しては門戸を閉ざしており、方針を転換した形だ。
まず『フォートナイト』が対応タイトルに選ばれ、
全プラットフォーム間のクロスプレイ、およびEpic Gamesアカウントを通じてゲームの進行状況を同期するクロスプログレッション・クロス購入が可能となった。

そして2019年1月、対応第2弾タイトルとして『ロケットリーグ』が追加され、こちらも全プラットフォームのプレイヤーがオンライン越しに一緒にプレイできるようになった(関連記事)。
特に『フォートナイト』が大きな人気を獲得して以降、SIEはコンソール間クロスプレイの対応を求めるコミュニティからのプレッシャーに晒されていたが、
こうした取り組みによりクロスプレイに関する議論はおおむね沈静化していた。
しかし、ここにきて今度はデベロッパーが声を上げ始めている。

Gaijin Entertainmentが手がけるMMOコンバットゲーム『War Thunder』の公式Twitterアカウントは2月3日、
「(PS4にて)最初にクロスプレイに対応し、最初の基本プレイ無料タイトルとなったにも関わらず、
コンソール間クロスプレイはまだ認められていない。どうしてなんだ、ソニー?」と自らのゲームの現状について、SIEに呼びかける形でツイート。
その後2月7日には、『War Thunder』はクロスプレイにフル対応する準備ができているとし、昨年6月に同作のXbox One版が発売される前と、
同年9月にSIEがクロスプレイのオープンベータを発表した際の2回にわたってSIEに問い合わせをしたものの、まだ許可がおりていないと説明している。

『War Thunder』が、PCに加えコンソール間のクロスプレイへの準備もできているということは、昨年10月に明らかになっていた。というのも、
一時的にPS4版とXbox One版のプレイヤーが一緒にプレイできる状態にあったことが広く報じられ、
サーバー側の設定ミスだとGaijin Entertainmentが認めたという出来事があったのだ(PlayStation Universe)。
技術的なハードルは高くないことは、かつて『ロケットリーグ』の開発元Psyonixや、SIE自身も認めており、
クロスプレイに意欲を持つメーカー各社ではこのように内部テストが進められているのだろう。
なお、Gaijin Entertainmentは当時も、SIEから正式な許可が下りるのを待っているとコメントしていた。

この『War Thunder』開発元の発言に触発されてか、今度はHi-Rez StudiosのCEO Stew Chisam氏が2月9日、
自身のTwitterアカウントを通じて「お気に入りのゲームばかりプレイするのはやめて、皆のためにクロスプレイ/プログレッションの壁を壊してくれないか」と、
ロナルド・レーガン米大統領のスピーチをもじりながらSIEに宛てて呼びかけている。
“お気に入りのゲーム”とは、おそらく『フォートナイト』と『ロケットリーグ』を指して皮肉ったのだろう。

Hi-Rez Studiosは、『SMITE』や『Paladins』『Realm Royale』といった作品を手掛けるデベロッパーだ。
同社はこの3作品において、クロスプレイおよびクロスプログレッションへの対応に積極的に取り組んでいることで知られ、
段階的に実現させているところだが、今のところPS4版については保留せざるを得ない状況となっている。

またChisam氏は、『Paladins』のNintendo Switch/Xbox One版にクロスプレイを実装した際のデータをもとに、
クロスプレイはマルチプレイゲームの試合の質を上げることにつながるとも述べている。
それによると、マッチングの待ち時間は30%減、プレイヤーのレベルのばらつきは40%減、試合ごとのイロレーティングの標準偏差は40%減、
そして(同社の定義による)“悪い”試合は80%減る結果になったという。
より多くのプレイヤーをひとつに集めることで、より適切な相手とより素早くマッチングできるというクロスプレイのメリットが分かりやすく現れており興味深い。
Chisam氏は、ここにPS4が加われば、さらにマルチプレイの質が向上し、全員が利益を享受できるということを言いたいのだろう。

https://automaton-media.com/articles/newsjp/20190210-84992/