「初心会」──。

一般的にはあまり知られていないが、かつてゲーム業界にその名がとどろいていた組織名だ。
任天堂は決まった卸売り業者を束ねて初心会を結成し、彼らに絞って商品を供給することで共存共栄の関係を築いてきた。
ピーク時は50社以上が所属していたとされ、ジェスネットとアジオカは大手メンバーとして存在感を放っていた。

初心会では在庫を全量買い取ることが定められており、任天堂は在庫リスクをなくして健全なキャッシュフロー経営を築くことができた。
これこそ故・山内溥元社長が編み出した儲けの方程式である。
ある業界関係者は、「人気タイトルを不人気タイトルと抱き合わせ販売するなど負の側面もあった。在庫リスクを価格に反映させるのでソフト1本1万円と高止まりしていた」と振り返る。


卸売り業者のみならず、サードパーティと呼ばれる外部のゲーム開発会社にも初心会は影響力を持った。「
任天堂タイトルの発売時期が優先されるので、自社タイトルの発売日をコントロールできなかった」(ゲーム会社幹部)。

売れそうなソフトならば担いでくれる場合もあるが、すべては任天堂のさじ加減。ソフトの委託製造から販売まですべてを牛耳ることで、任天堂は娯楽の王国の頂点に君臨してきた。

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