汗ばんだ手から滑り落ちそうになる双眼鏡を片手に僕は今日も向かいのマンションを眺める
目的の人物は…いない…今日は休みなのだろうか
いや出てきた…僕は思わず左手で掴んだものを強く握りしめた
彼女は今日もその褐色の肌を見せつけるように…いや、まさか僕がこんな風に覗いているなんて夢にも思っていないのだろう
おもむろに服を脱ぎ上半身裸で乾布摩擦を始める
彼女、朝日奈葵さんはいつもと同じ時間にベランダに出てあられもない姿でそれは楽しそうに乾布摩擦を始める

うら若き女性が裸でベランダに出て乾布摩擦をするなんて「どうぞみてください」と言っているようなものだ
もしかしたら彼女は本当に見せ付けたくてやっているのかもしれない
まったく飛んだ破廉恥娘だ、そんな彼女を良からぬ心を持つ他の男から守るために僕はこうして彼女を見守っているのだ、少しくらいいい思いをしてもバチは当たらないだろう
朝が苦手な僕だがこうして毎日使命感にかられて実にスッキリした気持ちで早起きできる

……おや。空室のはずの彼女の自宅の隣の部屋から何かがこちらを睨みつけていたような…
どうもセーラー服を着た銀髪の鬼が腕組みをしていたように見えたが
ははっ…そんなはずはないか…


おや、誰か来たようだ こんな朝早くに誰だろう