経済協力開発機構(OECD)に加盟しているような普通の国は、ほぼすべて「住宅総量目安」や「住宅供給目標」といったものを持っている。

世帯数の現状と見通し、住宅数とその質がおよそ把握できるわけだから、5年なり10年の間にどのくらいの新築を造れば良いかといった目安を立てるのはそう難しいことではない。その目安に合わせて税制や金融をコントロールしていくのである。

わが国にはこうした目安が一切なく、ただ景気対策としての住宅政策が行われている。新設住宅着工戸数が減れば景気の足を引っ張るとして、常に新築住宅促進政策が過剰に行われてきたのだ。

-----(中略)-----

おそらく国家が財政破綻し、無駄な金は使えないというところまで行かないと、このおかしな新築優遇は止まらないだろう。戦後のドッジラインのように、国家の補助金や国債発行に頼らない、身の丈の予算を組めるようになってからだ。

それまで無駄な公共工事のように新築は無計画に量産される一方で、空き家は増え街は無秩序に広がり、空き家対策はもちろん上下水道の修繕やゴミ収集などの行政サービス効率を悪化させ続けるだろう。

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長嶋 修(ながしま・おさむ)
さくら事務所 会長