なるほど、死人の髪の毛を抜くという事は、何ぼう悪い事かも知れぬ。
じゃが、ここにいる死人どもは皆、そのくらいの事をされてもいい人間ばかりだぞよ。


わしは、この女のした事が悪いとは思うていぬ。
せねば饑死をするのじゃて、仕方がなくした事であろう。
されば今また、わしのしていた事も悪い事とは思わぬ。
これとてもやはりせねば、饑死をするのじゃて、仕方がなくする事じゃわいの。
じゃて、その仕方がない事をよく知っていたこの女は、大方わしのする事も大目に見てくれるであろう。