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フドウデビルマンが常人十倍の脚力を抑えた瞬間、目の前に現れたのはマキムラハイツではなかった。
視界は赤と黒の奈落めいた光の帯が蠢いているのだ。視界の全面が金箔めいて潰れそうだ!
しかしフドウの視力はデーモン力で瞬時にその光景を補正していった。蠢く光の帯は…炎だ!
なんということであろうか!奈落めいた光の根源は、待ち焦がれたマキムラハイツだったのだ!
燃え盛るイロリ・ファイヤーを囲みシミ・トーフを並べる老婆めいて、無数のオトコサークルがハイツをとり囲んでいるではないか!
取り囲むのはマケグミサラリマン、違法バリキドリンクを服用したパンクなヤンクに、マッポも交じり古代のボンオドリめいてもいる。
その彼らはローマの突撃歩兵めいてランスをかざし、何か異形の物を先端に備え微かに左右に振り続けているようだ。
しかしフドウに気付いていない。マヌケぶりからも、スピリチュアル団体によるジツ・サークルではないのは確かだ。
 
フドウはこの状況をそのデーモン力をもって5秒で理解した。しかしミキがいない。
共にハイツで戦線を張ったはずの、ミーコにワム、ガビ、バボやヒエもいないのだ。どこにいったのか?
フドウが考えた直後の7秒目、ランスの先端に刺さった異形の正確な情報が徐々に取得され、瞬時に理解する!
 
ナムサン!ランスめいた物の先端にある異形で真っ先に確認できた物はミーコの首だ!隣左右には腕と足だ!
胴は多くの銃弾を浴びて爆発四散したらしくサラリマンの屍に無数が突き刺さっている。
しかし、デーモン力を持ったミーコが討ち取られたのだ。ミーコの討死は、フドウもあまりに辛い事実だ。
さらにミーコの両隣に並ぶ物にもフドウは衝撃を受ける。ガンナーのワム、ソードマンのガビだ!
彼らも多勢に無勢、奮戦かなわず壮絶な討死を遂げた…そして彼らもランスに括り付けられている。
そして、次の瞬間!フドウは、己の視力がデーモン力によって常人百倍に鍛えらている事を後悔する事になったのだ!
 
フドウが愛するミキもまた、仲間たち同様、ランスの先端に打ち据えてあったのだ!
 
おお、ナムアミダブツ!!フドウには予測したくなかったが既に予測できていたことだ。
フドウはあまりの悲劇に嘔吐ではなく、大量の涙を目から溢れさせ、前に歩き出した。
「サラリマン…ヤンク…!ミキと仲間を奪った憎き敵‥‥ころすべし…!!ころすべし!!!」
 
「悪魔は死んだ!」「バンザイ!」「悪魔ミコシ!」ランスをかざす男たちは前進してくる悪魔の陰にやっと気付いた。
フドウもまた、ランスを持ち上げ呪術めいて踊る一団にバボとヒエが混ざっている事に気付く。裏切られた…絶望がフドウの怒りに火をつける!
 
「悪魔が来たぞ!」「その頭はオイランですか?」「悪魔も魔女もみんなこうなる」「お前もいかがおいしいトーフ…」男たちが口々にわめきだした次の瞬間!
「また悪魔アバーーーッ!!!!!!!!!」ミキの首を持ったヤンクは飛来したデーモンブラッドによってスライスハムめいて粉々になった!「黙れッ!!」
「what's fuck?!」「アイエエエ!」「悪魔コワイ!」失禁、同士討ちに壮大な嘔吐、男同士の乱交!地獄絵図と化したサークルを尻目にフドウはミキの首を取り返す。
ミキの首を持った瞬間、フドウの脳裏には、無敵の耳飾りを信じ闘ったミキや討ち死にしたミーコ、ワム、ガビの思念が無念となって一気に伝わってきた。
その無念はフドウの背中からカトンとイビルのオーラを放つ!フドウは両腕を広げると、サークルに向かって突進していったのだ!
 
「やはり悪魔め!」「お前をfuckします!」「悪魔にザゼンドリンクを投擲!」男たちは、瞼を全開に狂いきり、襲い掛かる!
しかし相手はデビルマンだ。「腐れ切ったサンシタどもめ!監獄のフートンすらも生ぬるい!イヤーーーッ!!」フドウはもはや容赦をしない!
「アババババババーーーッ!!!!!!!」「GABOOOOOOOOOO!!!!!!」カトンジツはサークルを広範囲に一気に焼き尽くした!
「ウェヒヒヒヒヒヒーッ!!!!!」「アオオオーン!!!」裏切者のバボとヒエも恍惚の狂気のまま2秒で炭と化し粉末となって爆散!!
 
「おぬしたちこそ悪魔である!地獄に堕ちよ!!」
 
1時間後、だれもいなくなったはずのマキムラハイツ。
ひとり、愛する女の冷たくなった首を抱き、しゃがみ込んでいる黒衣の若者が居た。
むせび泣く声だけが聞こえていた…