アクロはバカじゃない
セントヘイブン噴水前で開かれた「アクロは馬鹿じゃない」大会に、全国から4000人のアクロが集まった。
「今日、私たちは全世界に向けて『アクロは馬鹿じゃない』ことを証明するため、ここに集まりました。
では、どなたか舞台に上がっていただけませんか?」
大会委員長のこの言葉に、群衆の中から 一人のアクロがおずおずと進みでて舞台に上がった。
委員長がたずねる、
「15+15 はいくつですか?」
アクロは10秒か20秒考えて言った。
「じゅうはち」
4000人のアクロたちは明らかにがっくり来たようすだったが、みんなで声援を送り始めた。
「もう一回 !!、もう一回 !!、もう一回 !! …」
この声援に応えて委員長がいった。
「今日まで私たちは苦労に苦労を重ね、やっと4000人の皆さんをここにお迎えすることができました。
アルティア大陸中の記者たちが取材に来ています。
そこで、彼女らにもう一度チャンスを与えてもいいと思います」
そう言ってまた尋ねた。
「5+5 はいくつですか?」
今度は30秒近くも考えてアクロが答えた。
「きゅうじゅう」 委員長は困ったような顔をしてうつむき大きくため息をついた。
会場の意気も上がらない。おまけにアクロは泣き出してしまった。
しかし、これを見た4000人のアクロたちは両手を大きく振りながら叫び始めた。
「もう一回 !!、もう一回 !! …」
このまま進むと取り返しのつかないことになるのではと心配した委員長だったが、とうとう口を開いた。
「OK! OK! それじゃあ、もう一度だけ…。2+2 は?」
アクロは目を閉じ、ゆうに1分は考えてこう言った。
「よん?」
スタジアムは大騒ぎになり、4000人のアクロたちは弾かれたように立ち上がり、
みんなで両手を大きく振り始める。
そして、足を踏みならしながら叫んだ。「もう一回 !!、もう一回 !!、もう一回 !!、…」