今年も夏祭りの季節がやってきた。

高校生にもなると男子たちは各町内会でも催しではなく、
祭りのメインでもある神社の大神輿を担ぎに行ってしまう。

女の子たちは高校生にもなると恋人ができたり気恥ずかしくなったりと
一人また一人と町内の活動に顔を出さなくなってくるのだが、
今年も井上はこれまでと変わらずに法被姿で町内の子供山車にいた。

普段はひょろっとしてどこか頼りない彼女だがここでは違った。
子供たちの面倒だけでなく、山車が問題なくとり行われるように
全体に気を配り、優しくしっかり者の彼女の姿がそこにはあった。
初日の片づけをしていると、井上のクラスメイトの男女グループと遭遇した。
その中には井上がよく見ている人気者の男子生徒の姿もあった。

●●「井上、まだ法被なんて着て山車ひいてるんだ。」
●●「浴衣姿の〇〇ちゃん、めちゃめちゃかわいくない!?」
井上「そだねー、私じゃ浴衣なんて似合わないもんもんね。」
●●「だよなー、井上じゃなー」

その後の井上は片付けもそぞろに、足早に自宅へ帰っていった。

もう彼女も町内のお祭りに来る事はないのであろう。
そうやってみんな大人になっていくのだと私は自分自身に言い聞かせた。

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チュンチュン

祭り2日目の朝は重い足取りで町内の子供山車の集合場所に向かった。

「おはよー、今日もがんばろー」

そこには法被に身を包んだ井上の姿が…