文化はマッシュアップによって発展していく:わたしたちがゲームをつくる理由(5)ポケットペア 溝部拓郎

必ずしも独自性にはこだわらない


──「任天堂の文化が合わなかった」というお話がありましたが、どういう点が合わないと感じたのでしょうか?

もともと任天堂のゲームは大好きで、それはいまも変わりません。深く尊敬もしています。ただゲームのつくり方として、任天堂は新しい作品、独自性のある作品を高い品質でしっかりつくろうという哲学が強く、任天堂ゲームセミナーでもそこが問われました。一方、わたしは自分の作品をひとりでも多くの人に楽しんでもらいたいという気持ちが根底にあって、そのために世の中によいアイデアがあればそれを拾うし、必ずしも独自性にこだわらなくてもいいと考えているんです。もっと適当でよいというか、気楽につくりたい。流行りものに安直に飛びつくような、そういうつくり方もよいじゃないかと(笑)
(中略)
多くの格闘ゲームは『ストリートファイターII』のUIを踏襲していますし、カードゲームも『ハースストーン』の影響を受けたものが多いです。インディーゲームで著名な作品は特に、過去の名作に強く影響を受けていることも多いですよね。文化は模倣によって発展していくものだと、わたしは思っています。

──ポケットペア最初の作品である『Overdungeon』も『Craftopia』も、ゲーマーであれば元ネタにピンと来る作品ですよね。

『Overdungeon』は、『Slay the Spire』と『クラッシュ・ロワイヤル』というふたつのカードゲームを融合すれば面白いゲームになるんじゃないかと思って開発した作品でした。でも、実際にやってみるとバランスがうまくとれなかったりして、ゲームの融合は思ったよりもはるかに難しく、うまくいかないものなのだと感じましたね。その一方で、複数の作品を模倣するとユニークなものができるという発見もありました。音楽でいう「マッシュアップ」に近い感覚です。そこで次に開発した『Craftopia』では開き直って、自分たちが面白いと思うゲームのエッセンスをありったけ入れてみることにしました。

──たった2作品のマッシュアップも難航したにもかかわらず、さらに増やしたと。

はい(笑)。ベースとして『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』を参考にしつつ、『Minecraft』のクラフト要素だったり、恐竜サバイバルアクション『ARK: Survival Evolved』の畜産要素だったり、面白いと思う要素を入れるだけ入れました。当然バグがたくさん起きたり、ゲームとして破綻したりしちゃうわけですが、それが面白いと思えたし、スタッフにも「自分が責任とるからどんどんやってよ」と言っていました。これはインディペンデントな立場だからこそできることですね。

https://wired.jp/article/why-stay-independent-5-pocketpair-takuro-mizobe/