――小島さんは何歳までクリエイターを続けたいですか。

以前から「生涯現役」がモットーなので、死ぬまでゲーム開発は続けたい、と言い続けています。
そのうちに、世界中でいろいろなAIエンジンが公開されて、それらのいい部分を採りながら自分のAIエンジンを作れるような時代になるかもしれない。
映画もゲームもコストの大部分が人件費です。
AIエンジンの時代になれば、コストは自分の人件費とAIの電気代だけになります。労働集約的なゲーム会社はなくなり、クリエイターとAIのコンビによるゲームスタジオが実現するかもしれません。
その頃には、自分の意識が「コジマエンジン」というAIの存在になって、永遠に作り続けているかもしれません。

いつか映画も撮ってみたいですね。ゲームを開発していると難しいから、いつにするかですね。

映画の作り方も変化している

――映画にも5年かけるのでしょうか。

そうですね。映画だと5年くらいかかります。売れるとか気に入られるとかは別にして、映画やテレビシリーズのアイデアは、たくさんあります。

映画は制作のスパンが長いので、今はハリウッドでも人材がTVシリーズ(Netflixやアマゾン、Huluのような配信事業者も含む)に流れています。
作り手としてはリスクの回避もしやすいし、ユーザーとしても続きを長く待たなくていいので、TVシリーズが活況です。
さらにTVだとユーザーからのフィードバックを受けて、作品に反映しやすい。
AAAのゲームは映画の制作スタイルに似ていますが、これからは映画のようなフルゲームではなく、TVシリーズのような短いスパンで、ユーザーの反応を取り入れながら作っていくように変わるべきでしょう。

――超大作の『007』とか『エイリアン』の続編を頼まれたとしたら?

名誉なことですが、普通は断るでしょうね。『スター・ウォーズ』が典型ですけど、絶対に失敗できない、みんなが逃げ腰になるようなオファーってありますよね。
でも、期待されていることや要求されていることのハードルが高い分、ステップアップするには大きなチャンスでもある。だからそういうオファーは、若い才能のための登竜門でもあります。

そういうチャンスを、この年齢のクリエイターに与えてくれるなら、簡単には断れない気もします。ドン・キホーテみたいに無謀で滑稽に見えるかもしれないですが、それを成功させるのは、とてもかっこいいことでもある。
巨大な風車がぐるぐる回ってぐちゃぐちゃにされて、勝ち目がまったくなさそうなのに戦うジジイって泣けますよね。でも負けたくはないですけど。
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