https://news.yahoo.co.jp/articles/9d4dbc14951045601ba779f891b89ac97ffa5bac?page=2
ゲーム業界全体が増収増益の傾向にあるように、今は外出自粛で時間を持て余す人が増え、
普段はあまりゲームをやらない層がゲームに手を出しやすい時期といえる。ゲームに詳しい評論家のさやわか氏はこう指摘する。

「ゲーム初心者の『入り口』として、フレンドリーなゲームが求められるようになった」

その点、任天堂は『マリオパーティー』をはじめ、初心者や子どもを交えて遊べるような「敷居の低さ」を重視してきた。
家族や友人と気軽に楽しめるソフトを充実させてきたことはライトユーザーを取り込む上で大きな強みとなった。

一方のPS4は、年齢層の高いコアな男性ゲーマーを中心に支持を集めている。『DARK SOULS』シリーズに代表されるように、スイッチと比べるとユーザーは高度なアクション性を求める傾向が強い。

「こうした操作性の高いゲームは、新規ユーザーにとって手が伸びづらい。結果的に、コロナ禍で生まれたライトユーザーや新規ユーザーは任天堂に流れていきました。
(ステイホームで)時間を持て余した人たちにとって手を出しやすいソフトが、スイッチでは『目の前にあった』のに比べ、PS4では見つけにくかったということでしょう」(同前)

また、スイッチのソフトに多くみられる「かわいいデザイン性」も追い風になった。数年前からトレンドに敏感な女性がライトユーザーとしてゲーム市場に流れてくる傾向があったが、外出自粛の影響でそれが加速。
「女性受けするデザインかどうか」がPS4と明暗を分けたとみることもできる。

 中川氏は「スイッチの看板ソフトは、デザイン性において明らかに女性に強い」と話す。

「女性も参入しやすいような仕様は、DSやWiiの時代から連綿と続いてきた任天堂のカルチャーと言えます。
(今回のコロナ禍で)コアなゲーマー層以外に、任天堂が築き上げてきた『かわいいデザイン』が刺さった」

さやわか氏は、特に『あつ森』のデザイン性の高さを指摘する。

「(あつ森は)着せ替えやインテリアなど、ファッショナブルな要素が女性の間で人気を博しています。
『こういう服かわいいよね』と、インスタで映える写真をあげる感覚でSNS上でカジュアルに発信することができます。
一方のPS4では、リアルなデーモンを狙撃する『DOOM Eternal』が象徴するように、デザイン的に女性受けするものは多くはありません」

 任天堂が取り込んだライトユーザーの中には、臨時休校によってステイホームを強いられていた子供たちも含まれる。
一日中家にいて暇を持てあます子どもに苦慮した親が、子どもにゲーム機を買い与えるケースも多かったと思われるが、「何を買うか」は親の印象によって大きく左右される。

「任天堂のソフトは、保護者の理解を得やすいような配慮が見られます」

 そう話すのは、ゲームジャーナリストのジニ氏。
先述したような小さな子どもでも楽しめる操作性のよさに加え、「暴力的な表現がないことも大きい」と語る。

「リアルさを追求したプレステでは、ゲーム内で血が流れるソフトが多数ありますが、ニンテンドーのソフトで血の流れる描写は見たことがありません。
また、プレステの主力ソフトにはリアルな銃で殺し合うゲームも多くみられますが、任天堂のソフトは銃の描写を忌避する傾向が強い」

 ジニ氏はこうした「任天堂カルチャー」の象徴として、1999年に発売された『ドンキーコング64』にまつわるエピソードを挙げる。
同ソフトを開発していたイギリスの企業はリアルさを追求してショットガンを撃てる仕様にするつもりだったが、視察に訪れた任天堂の上層部が難色を示し、ココナツの形をした武器に置き換えられたのだという。

 アクションシューティングゲームの代表作『スプラトゥーン』でも銃ではなく水鉄砲で撃ち合いが楽しめる仕様にするなど、「任天堂カルチャー」は今も受け継がれている。