4Gamer:
 そのとき初めてお会いして,「この人はスゴい!」となったわけですか。

原田氏:
 「この人スゴい」という予想はありましたが,それとも少し違うんですよ。僕に限らずこの業界で長く働いていると,どんなクリエイターにしろ,会ってみたらその人がどんな“アビリティ”を持った人か――「ものすごい感性を持ってるな」とか,「恐ろしい完璧主義者だな」とか――ある程度分かるじゃないですか。でも田畑さんと話して感じたのは……少なくとも,この人FFの人じゃないなって(笑)。

4Gamer:
 FFの人っていうと……やっぱり,野村哲也さんみたいな?

原田氏:
 いえ,特定の誰かってわけじゃないんですが。FFチームのリーダーっていったら,「繊細かつスタイリッシュな感性を持っている人」って先入観とかイメージがあると思うんです。でもこの人からは,それが見えなくて。小野さん(カプコン 小野義徳氏)みたいに,実はガチガチの理論武装をしてるってタイプでもないし,海外の一部のクリエイターみたいにものすごいオタクというわけでもない。強いて言えば,なんだかすごく無骨なゲームを作りそうってイメージなんですよ。

田畑氏:
 つまり,あいつFF作ってるのにぜんぜん繊細じゃねえぞ,と(笑)。

原田氏:
 いやでも,FFファンの中でも,なんとなく僕と同じことを感じてる方も多いと思うんですよね。「この人は一体どこから来て,どうしてFFなんて怪物タイトルの開発チームを率いることになったのか?」。そして,「本当に任せてしまって大丈夫なのか?」って。今日は,大変無礼とは知りながら,そこのところを明らかにしたいと思って来ました。

田畑氏:
 実は原田さんには,以前にもそのことを聞かれたんですよ。あなたのアビリティはなんなのかって。そのときは即答できなかったけど,今日はちゃんと考えてきました(笑)。僕はね,強力な組織を作るのがうまいんです。

原田氏:
 ……それは,もともと得意だったんですか? 学生の頃から?

田畑氏:
 いや,社会人になってからですね。
 人間同士のしがらみでチームのパフォーマンスが阻害されることって,よくあるじゃないですか。指揮系統とは違う方向から働いてくる力学とか,新旧のスタッフが混在することによって発生するボトルネックとか。そういう要因を日々見つけ出して,妥協せず容赦なく修正していく。それによって組織力を高めて,より高度な目標へのチャレンジを可能にする――そういうサイクルが,僕はすごく楽しいんです。

原田氏:
 なるほど。じゃあその能力を買われて,FFチームのリーダーに抜擢されたんですか。

田畑氏:
 抜擢って感じではなかったですけどね。ただ,そういうチーム作りを続けてきた結果,これまでのスクウェア・エニックスでは作れないようなタイトルが作れるようになってきた。それで,改革とセットでFFを任されたんだと思います。

原田氏:
 反発はなかったんですか? FFくらい歴史あるタイトルで改革を行おうとすれば,絶対に反発って出てくると思いますが。

田畑氏:
 そりゃあ,ありましたよ。チームの中だけじゃなく,外からも。だって,もし僕のやり方で結果が出てしまったら,都合が悪くなる人だっているわけだから(笑)。ただ,そこまで強いものでもなかったんです。今の日本の状況を見たら,現状維持なんてできるわけがない。10年前ならまだしも,明らかに世界に対しては負けているわけで。そういう意味では,この状況は僕にとってラッキーだったと思います。


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