4Gamer:
 FFXVチームではどうなんでしょう。開発作業の中でも意見の衝突は起こりますよね。

田畑氏:
 決まるまではいろんな意見を出し合うけれども,一度決定したらそれで行く,という体制ができています。そこは今回,組織作りからきちんとやってきた部分ですね。何か不満のような発言を聞いたら,僕は「それは愚痴なのか,それとも改善すべきポイントなのか」と問います。愚痴だったらスルーするけれども,改善すべきであれば,もう一度皆で考え直そうと。ただ,今話したように,皆がさまざまな意見を交わした上で決定されているわけですから,あとから覆ることは基本的にありません。

4Gamer:
 「愚痴なのか,改善すべきポイントなのか」というのは,我が身を振り返るとなかなか痛い言葉ですね……。

田畑氏:
 また「Aも大事だし,Bも大事だけれど,両方選べない以上,FFXVにとってはほんの少しAが重いので,Aを選んだ」というようなこともハッキリ表明するようにしています。そうすることで,Bを支持していた人の理解も高まりますよね。

野末氏:
 チーム内では情報がオープンなので,皆が等しく判断材料を持っているんですよね。だから決定に対する信頼度も高くなるんです。

4Gamer:
 そういった難しい判断の中で,とくに印象深いものはありますか。

田畑氏:
 毎日のように判断していますからねえ……。一番侃々諤々したのは,オープンワールドの技術を採用するかどうかでした。

野末氏:
 ああ,あれは大変でしたね。

田畑氏:
 最終的には「もし失敗したなら,それで構わない」というスタンスで,オープンワールドを採用したんですが,とにかくエンジニアを中心に猛反対するスタッフがいたんです。「ストーリー進行があるのだから,マップを切り替えてイベント主導方式でいくほうが確実じゃないですか。その上でコンテンツを充実させましょう」と。オープンワールドな作りにすることで,ゲームがスカスカになって失敗するリスクが高まる,という危惧があったんでしょう。

4Gamer:
 田畑さんがオープンワールドにこだわった理由は何だったんでしょうか。

田畑氏:
 今,このタイミングでオープンワールドではないRPGは,海外のRPGファンから「何でオープンワールドじゃないんだろう」と思われてしまいます。特にFFXVは世界を旅するゲームなので,普通にそう思われてしまうだろうなと。
 またかつて,FFがRPGの最先端だった時代がありました。FFXVで再びそこに戻ることを目指す意味でも,オープンワールド化は,とても分かりやすい近代化です。それぐらい変化がなければ「Skyrimと勝負します」と言っても説得力がない。
 だからストーリーに沿ってゲームは進むけれど,オープンワールドの技術で世界を表現する。この方針は譲れませんでした。

野末氏:
 皆で意見交換するために,プチ合宿して,そこで納得いくまで話し合ったんです。

4Gamer:
 それはいつ頃の話ですか。

田畑氏:
 2013年のE3でFFXVを発表した数か月後,ちょうどLuminous Studioチームと合流したタイミングですね。その時点でエンジニア達は,「スクウェア・エニックスのノウハウでは,オープンワールドは無理だ」と頑として聞き入れませんでした。とくに外国人のエンジニアは,そういう傾向が強かった。


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