▼「人間には『親を看る』というDNAがないのよ」
特にウチの母は「娘なんだから、面倒を看るのは当たり前」
「仕事よりも親のほうが大切。仕事を辞めて介護するべき」「今まで育ててあげた恩を返すのは当然」という
姿勢を最期まで崩さず、私はどんどん疲弊していった。

「頼むから、死んでくれ(=もう私を解放して!)」。そんな自分の心の声に罪悪感を持っていたのだが、
あるとき“救世主”が舞い降りた。
知人のサイエンスライターに「同じような用事でも、わが子のそれは比較的、軽快にできるのに、
母の用事だと一気にやる気が失せるのはどうしてなんですかね」と聞いたところ、こんな答えが返ってきたのだ。

「それはね、りんこさん、人間には親をみるというDNAがないからよ。
あらゆる生命体には子の面倒はみても、親の老後をみるという遺伝子がプログラミングされてない。
日本人はちょっと前まで、末子が15歳になるかならないかくらいで、みんな死んでいたのよ。
親の用事をやってあげようかって思っても、その親は自らが用事を果たせなくなった段階で全員が死んでいったってこと。
子どもがやる必要もなかったのよね」