HIVに感染しても、すぐに抗HIV薬は出してもらえません。
抗HIV薬は非常に高い薬で、たとえ3割負担であっても生活できなくなってしまう程の高い薬なので、
障害者手帳を取得し、自立支援医療という医療制度を使わないといけません。
しかしその取得には時間がかかるのです。それまでの間は、抗HIV薬を飲まない状態でありながら、
AIDSによる病気を防がなければいけません。その時に病院でやるのが「吸入」です。

吸入は、AIDSによる肺炎(カリニ肺炎もしくはニューモシスチス肺炎といいます)を起こすのを予防するため、
肺炎予防の薬を肺に直接吸入するのです。
水蒸気を30分くらい吸い込む感じなのですが、その水蒸気には薬が含まれていて、それが本当に辛いのです。
咳き込んで、鼻水と涙を垂らしながら、「生きるために、やらなきゃいけないんだ」と信じてなんとかとにかく吸い込みます。
途中で「なんで自分ばっかりこうなるんだ」「ここまでして生きる意味なんてあるのか」
「こんなふうになるなんて、自分の人生なんなんだ」なんて思ったりして、泣きそうになったりするのですが、
泣いてしまうと吸入ができないのでグッとこらえます。病院からの帰り道で、いつも泣いていました。
自立支援医療が適用されるようになって、抗HIV薬を飲み始めてやっと吸入を卒業することができた時は、
本当に嬉しかったです。