日曜の朝、鯵鯖某所
軍艦愛好家たちが集まる小さなサイトのランク戦オフが開かれようとしていた
集合時間10分前、既に来ているメンバーは7人
その輪の中へ、俺は愛車の吹雪で乗り付けた
「おはよう!フブキッドです!今日はよろしく!」
元気よく自己紹介する
「…あ、おはようございます」
「フブキッドさんって隠蔽スキル無しなんですよね?迷彩も…」
なぜか皆の視線が泳いでいる
「遅くなってスイマセ〜ン!」
ベンソンに乗ったオッサンが大きな声を出しながらやってきた
「幹事のベンソンオヤジです。今日は皆さんよろしくお願いします」
この人が今回のオフの主催者であり、サイトの管理人でもあるベンソンオヤジさんだ
「あ、どうも!フブキッドっす。よろしく」
俺が挨拶をすると、ベンソンオヤジは眉間にシワをよせて、俺と吹雪をジロジロと見てきた
「え〜っと…フブキッド君だっけ?君さぁ、今日どこに行くか知ってる?」
「え…?ファーストを目指しながらランク戦オフっすよね?」
「うん。で、君の駆逐艦…それ日駆だよね?」
何が言いたいのかわからない。愛車を日駆呼ばわりされてイラっときた俺は言った
「何が言いたいんスか?」
「ランク戦に乗るんだけど…日駆じゃ乗れないよね?」
「…大丈夫っスよ!ブン回せば皆さんに迷惑かけないくらいのスピードは出ますし」
爆笑の渦が起こった。そしてベンソンオヤジは苦笑いしながら言った
「日駆はランク戦を走っちゃダメなんだよ。それにそのスピードメーター見てごらん」
視線を落とす。そこには35knotが限界のメーターがあった
「ベンソンは38knotで襲って来るからね。君の吹雪じゃ逃げられないよ(苦笑」
俺は泣きながら家に帰ると、そのまま枕を濡らして眠ってしまった
目を覚ますと午後10時、パソコンの電源を入れてあのサイトを覗いてみる
そこの掲示板には、今日のランク戦オフを楽しそうに振り返るメンバーたちの書き込みがあった
俺は偽ハンドルネームを使って『ベンソンオヤジ臭ぇんだよ!死ね!』と書き込む。
すぐに管理人からのレスがあった
『吹雪君だね。当サイトのルール通り、君をアク禁にします』