無償の贈り物というのに、周防桃子は慣れてはいなかった。恐らく、それは彼女が育った境遇によるものだろう。
物心ついた時から、彼女は「最高の演技」を求められたし、それに応えてきた。賞賛の言葉であったり、あるいは贈り物であったりというものは、給料と同じように報酬でしかなかった。
だから「誕生日に何が欲しいのか」などという単純な質問にも、こんなにも困惑してしまうのだ。
これが儀礼的なものであったのなら、ここまでは困らなかっただろう。女社会の、とりあえずの作法だということで、無難に高すぎず安すぎないものを言うことで、乗り切ったはずだ。