今回のパンデミックについては、わが国では厚労省、国立感染研、日本医学会をはじめとする多くの学会が、海外ではCDCやWHOが質の高い情報を発信しているが、これを信用せず、SNSで拡散するデマを信用する人が多い。欧米では、こういった人々の社会学的解析が進んでいる。米国の調査では新型コロナウイルス感染症の存在を否定する人々は、かつてのAIDS否定論者、抗レトロウイルス薬忌避者同様に人種的マイノリティが多く、教育の機会がなく、経済的にも恵まれないため、迫害されてきたという意識を持っていることが多いという1)。英国の複数の調査でも、ワクチン拒否者は低学歴、低収入に加えて科学者、医療専門家、国家に対する信頼度が低く、認知能力と利他意識が低いとされている2)。いずれも単なる陰謀論者と片付けず、わかりやすい説明で政府や医療機関に対する信用を持ってもらうことが重要であると結論付けている。
なぜ、こういった人々がフェイクニュース(デマ)を信じてしまうかというと、EQ(感情的知性)が高く、高学歴の人間はフェイクニュースに含まれる感情的な内容を無視するのに対し、思い込みが強い人は、記事の内容が自分の既存の信念に合っている場合簡単に引っかかってしまうからだという3)。医療関係者の中でも医師に比べて看護師はフェイクニュースを信じやすいという統計から、イスラエルでは看護師を一般人の代表としてわかりやすい説明を準備し、全国民予防接種への道を開いた4)。今後、我が国でも予防接種普及にあたり他山の石としたいものである。