イベルメクチンは、3T3-L1前脂肪細胞の脂肪形成を阻害することにより、トリグリセリドの蓄積を減少させる。

概要
イベルメクチンは,無脊椎動物の神経細胞に存在するグルタミン酸受容体のクロライドチャネルに結合して作用する,代表的な抗寄生虫薬である。しかし、脂肪細胞のような非神経細胞におけるイベルメクチンの影響については、限られた情報しかない。
本研究では、3T3-L1前脂肪細胞を用いて、脂肪細胞形成におけるイベルメクチンの役割を調べることを目的とした。イベルメクチンは、前脂肪細胞の分化とトリグリセリド(TG)の蓄積を阻害した。特に、脂肪原性分化期の中期から後期(2〜8日目)にイベルメクチンを処理すると、脂肪蓄積の抑制に相関した。また、イベルメクチンの投与は、脂肪形成、脂肪酸の合成、取り込み、酸化における主要なマーカーのmRNA発現を有意に調節し、グリシン受容体(GlyR)の2つのサブユニットの遺伝子発現を増強した。
具体的には、ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体γ(PPARγ)、CCAAT/エンハンサー結合タンパク質α(C/EBPα)、アセチル-CoAカルボキシラーゼ(ACC)のタンパク質レベルが低下した。興味深いことに、イベルメクチンによるTG蓄積の抑制は、特異的なPPARγアゴニストであるロシグリタゾンによって部分的に解消されたが、選択的なFXRアンタゴニストであるZ-ググルステロンでは、イベルメクチンによる脂肪生成への影響を救済できなかった。
最後に、イベルメクチンはペルメトリンとフィプロニルで誘発される脂肪形成を阻止した。結論として、イベルメクチンは、FXR依存性ではなく、PPARγおよびGlyR依存性の経路を介して、3T3-L1前脂肪細胞の脂肪形成を部分的に阻害することがわかった。