国立感染症研究所

mRNAワクチンとウイルスベクターワクチンはともに, この数年〜10年で開発が進んできた, 歴史が浅い新しいワクチンプラットフォームである。

COVID-19ワクチンは, 観察期間は短期間であるものの, 高い発症予防効果を有することが治験により明らかになった。また, 安全性についても, 接種直後(1週間以内)および短期的(3カ月以内)に起こる副反応のうち, 比較的高頻度で発生するものについてはデータが得られており, これらのワクチンの接種において注意すべき点が明らかになってきた。
これらのデータを合わせ考えると, これらのワクチンは, ある程度の副反応はあるものの十分に有効であり, 流行拡大が続く現状においては, 重症化リスクや感染リスクの高い者への接種による利益は, 副反応という不利益を大きく上回ると考えられる。

一方で, 稀有な副反応や長期的(3カ月以降)なワクチンの安全性については未解明の部分が多く残されている。これらについては, 今後, データが蓄積されていく欧米や, 国内導入された後の市販後調査の中で徐々に明らかになっていくことが期待される。また, 安全性という側面だけでなく, 長期的にワクチンで誘導された免疫が減衰してきた時の有効性(免疫減衰時に感染した場合の病態悪化の有無も含めて)を明らかにするためにも, ワクチン被接種者を対象とした継続的な研究が必要不可欠である。

いずれにしても, 導入時点では, これらの新規プラットフォームワクチンの性質のすべてが明らかになっているわけではなく, 既存ワクチンでは想定しなかったような事態も発生する可能性があるということを, ワクチン接種にかかわるすべての者が認識しておくべきである。