黒 縛り付けた覚えなどないな。彼らは力で支配されることを望んだのだ。
聖 望んだだと?
黒 そうだ。
黒 …世の中を見渡してみろ。どれだけの人間が自分だけの判断で物事を成し遂げるというのだ?
黒 自らの手を汚し、リスクを背負い、そして自分の足だけで歩いていう…。
黒 そんなヤツがどれだけこの世の中にいるというのだ?
聖 ………………。
黒 …貴公らの革命を思い出してみよ。
黒 貴公らが血を流し、命を賭けて守った民はどうだ?
黒 自分の身を安全な場所に置きながら勝手なことばかり言っていたのではないのか?
聖 彼らは自分の生活を維持するだけで精一杯だったのだ…。
黒 いや、違う。被害者でいる方が楽なのだ。
黒 弱者だから不平を言うのではない。不満をこぼしたいからこし、弱者の立場に身を置くのだ。
黒 彼らは望んで『弱者』になるのだよ。
聖 ばかな…。人には自分の人生を決定する権利がある。
聖 自由があるのだ!
黒 本当の自由とは誰かに与えてもらうものではない。自分で勝ち取るものだ。
黒 しかし、民は自分以外の誰かにそれを求める。自分では何もしないくせに権利だけは主張する。
黒 救世主の登場を今か、今かと待っているくせに、自分がその救世主になろうとはしない。それが民だッ!
聖 人はそこまで怠惰な動物じゃない。ただ、我々ほど強くないだけだ。
黒 ……聖騎士よ、貴公は純粋すぎる。
黒 民に自分の夢を求めてはならない。支配者は与えるだけでよい。
聖 何を与えるというのだ?
黒 支配されるという特権をだッ!