令和X年、日本中になんと怨霊が蔓延してきたという
前代未聞の珍事に国民は震え上がった

そこで、政府は税金で霊験あらたかな壺を国民に配ることにした
「怨霊にはこの壺が最高に効く」というのが、永らくオカルト呼ばわりされてきた老陰陽師によって明らかになったからだ
全国の善男善女はその霊験あらたかな壺をもらうために日夜行列しやがったのだった
ところが、程なく、その壺から別の怨霊が出ているとのけしからぬ報告が出てきた
中には流行り怨霊とは違った亡くなり方をする人も多数報告され
それまでの新興宗教による被害者統計の百倍の被害報告が出てきた

一方、大多数の声は「反壺は非国民だ!」「壺を疑うなんていうのは野狐禅です」「フリーライダーは許さない」
と言ったものだ
そして、専門家たちは壺推進を鼓舞する
「つべこべ言わずにさっさと壺を置け!」
「六割壺設置で、全国の怨霊は減っていく」
「みんなのために壺を置け」

反壺の主張によれば、部屋の風水の具合かなにかで壺を置いた途端に災いが起きることもあるといわれる
また、長期間、壺怨霊による災いに悩む人もいる
「信じて!私は反壺を憎んでる!!けれど、壺怨霊にも苦しめられてる、どうしたらいいの?」

壺推進派に相談するも「そんなのはたまたまで、死んだ人も苦しんだ人もいませーん」
と冷笑され、とりつくしまもない、、、、、

そうこうするうちに流行り怨霊は変化をし、壺一つでは収まらない、という話になった
ならば、ということで政府は二つ目の壺を配布するということに相なった
ところが?壺二つを置くと、どうやら壺怨霊の災で亡くなる人が急増してしまった
むむむ、これはまずい、、、、
「皆のもの、流行り怨霊は変化をして強力なものとあいなった、然るに早急に二つ目を取りに来られたし
よろしいか、迅速さこそが肝要でござる」

怨霊は変化して尾身怨霊となり、これは災いも少なく消えてくれることが、反壺界隈では常識となっていた
これで怨霊騒ぎもおしまいだね、との声もあった

壺推進派は
「壺には蔓延を防がないが、個々の災いを大きくしなくて済む」
「怨霊を舐めちゃいけない、怨霊が出たらすぐに陰陽師を呼べ」
「いや、何でもかんでも陰陽師を呼ぶな!迷惑だ!」
などと混迷を続けたのである

おしまい