長尾クリニック院長

塩野義ゾコーバ緊急承認見送りに思う

塩野義さんの薬は抗ウイルス剤なので発症初期であるほど実力を発揮するはずです。
その治験に至るまでに開業医→PCR検査→保健所→病院→インフォームドコンセントなどで
数日間経過した症例が多いのではと想像します。
だからできれば発熱初日から投与できれば、薬の実力を評価しやすいでしょうが、
それができないような治験体制になっているのです。
厚労省の臨床治験は大変厳しく、自宅待機者でも製薬会社が用意したタクシーで毎日、
病院に連れていかれ採血などのチェックを行います。
しかも、それはもしかしたら飴玉(偽薬)を飲まされているのかもしれないのです。
そんなコワイ説明を聞いたら治験を参加してくれる人もあまりいないでしょう。

感染症の薬も血圧や糖尿の薬と同じようなプロセス(症状や副作用のチェック)が求められている
のです。
しかも二重盲検(RCT)という形でしか承認されないのです。
本来は、長尾クリニックのような「トレトレのコロナ」をたくさん診ている医療機関で治験を
やればいいのでしょう。1週間でできます。
しかし国は開業医なんか信用していないので、どうしても大きな病院での治験になります。
チェック項目も非常に煩雑なので治験コーデイネーターが常駐している大病院でしか
できないことになります。
もし本当にその薬の実力を計りたかったらそんな大義名分よりも「実」」をとるべきなのです。
しかし、残念ながら硬直化した薬事承認行政はそれを許しません。

特例承認されたアメリカの薬だって、もしも日本国内の試験を受けたら合格するのは
至難の業ではないのか。
以上をまとめると、現状の治験システムでは国産のコロナ薬など真面目にやれば
永遠に生まれないのではないか、という話です。
つまり、感染症治療薬の臨床治験ないし緊急承認のあり方を根本的に見直すべきだと思います。

http://blog.drnagao.com/2022/08/post-8052.html