北米のシカを襲う“ゾンビ病”──異種間でも感染した謎の病気の正体とは

北米のシカたちを“ゾンビ病”が襲っている。
いわゆる狂牛病と同じで、異常タンパク質のプリオンが原因となって発症する。
専門家による実験ではサルの一種が発症するなど、ヒトも含む異種間で伝染する危険性があるという。
そんな謎の多い病気の脅威に迫った。

すべては、ちょっとした歩行の問題から始まる。しかし、時とともに鹿は目に見えて痩せてゆく。
集団から孤立し、次第に正常な意識を失う兆候を見せ、最終段階に至る。
目的もなくふらついて、うつろな目を宙に向け、口から粘り気のある唾液を垂れ流す。
ついには食べられなくなり、飢えて死ぬ。

この病気の正式名称は「シカ慢性消耗病(Chronic Wasting Disease、CWD)」という。
北米では“ゾンビ鹿病”として知られている(理由を察するのは難しくないだろう)。
とはいえ、あえて第3の名前も挙げよう。“狂鹿病”だ。

実際、狂牛病と同じ伝染性の海綿状脳症の一種で
この最も有名な病気と同様、プリオンによって引き起こされる。
プリオンは異常なタンパク質だ。ウイルスやバクテリアのように拡散して増殖する。
主に北米地域でシカやトナカイ、ヘラジカに伝染する。

この病気を引き起こすのは、すでに言及したようにプリオンだ。
ひとたび組織内に入ると、ほかのタンパク質をプリオンへと変えてしまう。
病原体と同じように拡散されるのだ。

シカやノロジカ、トナカイの場合、プリオンとの接触は通常、食事の間に起こる。
病気の個体が汚染した草(症状のひとつが大量の唾液であると思い出してほしい。
これによって、プリオンは環境中へと拡散してゆく)を健康な個体がかじると
変異したタンパク質に攻撃され、感染する。
そして今度は、彼らが新たなプリオンを撒き散らすようになる。

人間がこうした経緯で感染する危険性はほとんどないが
“プリオン病”がヒトにとって危険なことに変わりはない。
狂牛病と同様、肉の消費を通じても、また場合によっては
感染した動物の体液や体組織と接触するだけでも拡散しうるからだ。

https://wired.jp/2018/02/08/zombie-disease/