山口 そもそもワクチンとデマは、非常に相性がいいんです。主に三つの理由が挙げられます。第一に、米国大統領選挙でも見られたように、多くの人に関係すればするほど、人々の関心が高ければ高いほど広がりやすいというフェイクニュースが持っている性質です。

 第二に、高度な専門知識が必要であること。ワクチンについて詳しく正確に知識を身に付けている人はごく少数で、一般的な人は専門知識がありません。すると、知識がないので不安になります。この不安な感情が、フェイクニュースの拡散メカニズムにおいて非常によく機能するんです。

 第三に挙げられるのは、デメリットが目立って、メリットが目立ちにくいというワクチンの特徴です。ワクチンを接種すると副反応が出ます。これはファクトですが、発熱がけっこう強く出る方もいて、そういうデメリットは目立ちます。一方で、メリットはわかりにくい。

讃井 たしかに、新型コロナワクチンには感染、発症、重症化を予防する効果があるとデータで示されており、それは疑いのない科学的事実なのですが、個々人の目にはワクチンの効果は見えにくいですからね。感染しなかったとか重症化しなかったというのが、ワクチンを打ったからなのかどうかは個人レベルでは基本的にわかりません。

山口 このようにデメリットのほうが目立つと、「ワクチンには有害物質が入っている」といったような話が広まりやすくなってしまうんです。

 では、なぜ少なからぬ人が騙されてしまうのでしょうか。これにもいくつか理由があります。