貼るわ 良ければ採点でもしてくれ


「うん、約束する。絶対に帰ってきて、また怜のそばにいてあげるからね」
 何度も同じ夢を見る。目覚めるたび、現実とのコントラストに胸を締め付けられる。
 夕暮れを背に微笑む少女の名前を、僕は覚えている。出会ったときからその日まで、ずっと彼女に支えられていたことも。
 だけど、きっと結華は帰ってこない。
 彼女は『実在しない』のだから。

 ***

 少年一人の記憶の中だけに存在する少女・廣瀬結華。
 幻だと理解していても、彼女との再会を夢想することだけが、世を厭う17歳の美少年・高崎怜にとっての生きる意味だった。
 その微かな光で心の闇を照らす日々を送っていた彼のもとに、一人の女性が訪れる。
「もう一度会えるなら、他のすべてを手放しても構わない。君にそんな人はいないかな?」

 遥か彼方の理想。秘められた世界の真実。
 少年の儚くも切実な願いが、物語を形作っていく。