アーデンは長い間、それこそ途方もない時間、自分を殺す事の出来る真の王が生まれるのを待っていた。
かつて自分を迫害し処刑したルシス王家、自分を拒んだ聖石に恨みはあったが、それもまた長い長い時間の中でどうでもよくなっていた。
とにかくこの無限に続く命を終わらせたかった。

しかし、待ち焦がれた真の王候補は、とんでもないヘタレなボンボンに育っていた。
次期国王という自覚も無く、我が身を削り国を守る覚悟も無い青年に育ちつつあった。
このままでは命と引き換えにクリスタルの力を解放し、自分を消し去る事など不可能だろうとアーデンは思った。

そこで帝国に取り入り、操り、まずは彼からルシス王国を奪う事にした。更に父である王を殺し、王を引き継がせる事でその覚悟を固めさせる作戦に出た。

しかし彼は真の王となる為の旅には出たものの、仲間とチャラチャラ遊び呆けているだけでなかなか前に進もうとしない。

仕方ないので旅が順調に進むように色々手伝いをしたり、六神に会うようにアドバイスしたりした。

やがてやっとオルティシエに辿り着いてくれたものの、今度はギャンブルにハマってしまった。

仕方がないので恋人を殺す事にした。これで彼は自分を憎み、真の王として覚醒してくれるはずだ。

案の定、彼はリヴァイアサン戦で覚醒した。これで安心だ。きっとこの先の旅も順調に行くだろう。

しかし彼はその後も、ウジウジしてるだけで婚約者から託された指輪さえはめられず、仲間には怒鳴られる始末。
いったいどうすれば彼を変えられるのか。

そこでアーデンは仲間をさらい、更に残りの仲間ともいったん分断し、更に武器を使えなくして指輪をはめて1人で戦わなくてはいけない状況にした。
途中でシヴァにやられたが痛かっただけでやはり死ねない。

思惑は成功した。彼はついに自らの命と引き換えに自分を殺す覚悟を決めてくれたのだ。つれぇらしいが仕方ない。彼しか自分を殺す事が出来ないのだから。

最後ぐらいはちょっと抵抗して彼も満足して死ねるような演出をしてやろう。じゃないと可哀想すぎるから。