第八章「仇敵」

 サントハイムへと向かう船の上で、ソフィアはライアンからいきさつを聞いていた。
彼の故郷バトランドでの誘拐事件以来、故郷を出て勇者を探し歩いたこと、その間にあった様々なこと。
こんなにも私を探し続けてくれた人がいたなんてと、ソフィアはそっと涙を拭った。

 一行はついにバルザックがいるサントハイム城に到着した。
だがここで一悶着起きた。
自分たちの城が心配なサントハイム組と、目と鼻の先に敵がいる姉妹が互いにパーティー入りを譲らないのである。
ソフィアは悩んだが、結局姉妹の敵討ちを優先し、サントハイム代表としてアリーナに来てもらうことにした。

 おそるおそる城内へ入る四人。
しかし別段変化はないようである。
アリーナがほっとした瞬間、魔物が襲ってきた。
サントハイム城は既に魔物の巣と化していたのだ。
次々と襲ってくる魔物たちを退けながら、一行は二階に上がった。

 二階の玉座には巨大な魔物が座っていた。
どうやらあれがバルザックらしいが、マーニャとミネアは戸惑っている。
以前のバルザックとは姿が違うのである。
様子をうかがっていると、バルザックが話をし始めた。
進化の秘法で己の体を改造したとのこと。
父エドガンの遺志を継ぎ、進化の秘法はなんとしても葬り去らねばならない。
マーニャとミネアはバルザックに飛びかかって行った。

 だがバルザックは難敵であった。
二回攻撃の上、凍える吹雪とヒャダルコをあやつるのである。
回復のタイミングが遅れ、マーニャが死んでしまった。
バルザックの相手をアリーナに任せ、ミネアと
二人で回復しながらマーニャにザオラルをかけるが、一向に効かない。
成功率は二分の一と言われているが、何度やっても効かないのである。
お願い生き返ってと涙を浮かべながら、ソフィアはひたすら呪文を唱え続けた。

 やっとマーニャが生き返った。
しかしソフィアのMPはほとんど残っていなかった。
こうなればひたすら攻撃するのみである。
運よくアリーナとソフィアの会心の一撃が
重なり、バルザックがよろめいた。
マーニャ、ミネア、とどめを! とソフィアが叫ぶ。
ミネアが切り刻み、マーニャが焼きつくす。
さしものバルザックも崩れ落ちた。
とうとうバルザックを倒したのである。

 マーニャとミネアは泣きながら抱き合っている。
ソフィアとアリーナも思わずもらい泣きしてしまった。

 しかしそんな中ミニデーモン三体が現れた。
結果を見届けた三体は、つぶやいた後去って行った。
どうやらバルザックは実験体で、進化の秘法の完成には黄金の腕輪が必要らしい。
だが黄金の腕輪がどこにあるかも不明である。
進化の秘法の完成を阻止するにはどうすればよいのか、ソフィアはわからなくなってしまった。

 そのときアリーナが突然声を上げた。
彼女はいなくなった父王の姿を求めて城中を探し回る。
しかし王はおろか城の人間は誰も見つけ出すことができなかった。
ソフィアはひとまず隣街サランへ行こうと思い、悲しみにくれるアリーナを、馬車のところへ連れていくのであった。