深夜のトレーナー室に、明かりが点いている。トレーナー室に響き渡っているのはアイネスフウジンの嬌声だ。「いやあ、参った参った」
アイネスフウジンは一人で笑っている。笑いながらも竹刀を振り続けている。ときおり素振りに飽きるのか、壁に貼られた鏡を見ながらシャドーボクシングなどしている。
「どうしたんですか?」
「ああ、師範代」
愚地独歩の声には張りがあった。まるで三日も四日も不眠で剣を振っていたような声音である。「ちょっとな、面白い奴を見つけてね」「面白い? 新しい門下生ですか?」
「まさか」
愚地はまた笑うと、手にしていたタオルを投げ捨てた。それから竹刀を置き、ベンチから立ち上がって窓の外を見た。「それより師範代こそこんな時間に何してんだ?」
「私は……」
愚地克巳は口籠った。少し迷ったが結局、「ランニングです」と答えた。
「ランニング?」
「はい」
「夜中にかい?」
「……ええまぁ」
「そりゃ大変だ」
愚地はそう言うと腕組みをした。「じゃあ俺も付き合うよ」
「いえ、結構ですよ」
克巳は慌てて断った。

全然エロくならんな……