かつて、攻略不可能とされる秘境があった。
ある年寄りの冒険者がこの秘境へ足を踏み入れた。
烈火に皮膚を焼かれ、雷鳴に鼓膜を刺され、狂風に魂が引き裂かれそうだった。
この地獄のような旅の終点で彼を待っていたのは、なんと赤子だった。
自分こそがこの「絶境」に足を踏み入れた最初の生き物だと、冒険者は思っていた。だからこそ、目の前の光景を理解できなかった。
「この赤ん坊は…世界に捨てられた子なのだろうな」
ふと彼の頭に浮かんだ考え、それが真実なのだと彼は信じた。
伝説の武器や数えきれない程の黄金は手に入れられなかったが、老人の顔に落胆の表情が浮かぶことはなかった。
彼にとって、目の前で必死に生きようとする赤子こそが「宝物」であったからだ。
「この冒険にはきっと意味があるのだろう」そう思いながら、老人は赤子を抱きしめた。
たとえそれが世界の意思に背くことだったとしても。
老人はあの冒険を誰かに話す前に、「絶境」から救った子供を残して、この世を去った。
彼は亡くなる直前、「意志」「冒険」「終点の宝物」という言葉を残した。
冒険者協会モンド支部には、まだ妻子のいないベテラン冒険者が数人いた。
彼らはその子供をベネットと呼び、我が子のように育てた。


こいつガチで炎神の血族かなんかだろ