「心海ちゃん、一緒にお昼食べようよ。お弁当見せて。」
「昆布のおにぎりとかおばあちゃんみたいwこの変な卵料理もなんか臭いし、私達が心海ちゃんのお弁当を可愛くアレンジしてあげるねw」
バーバラ達は珊瑚宮さんを取り囲んだ。あれを始めるつもりだろう。俺は何度もされているが、思い出すだけで吐き気がする。
「ねえねえ、私今朝いいもの採ってきたんだけどさ、見て見て~!カエルとオニカブトムシ~!この子のお弁当に絞ってかけてあげようよw」
「任せて。料理は得意。」
バーバラの取り巻きの二人がはしゃいでいる。一方は胡桃といい、目の変な嫌な奴だ。もう一方は蛍といって、冗談だろと思う事を平気でやってのける質の悪い奴である。
「うわぁ、二人とも本当にエグいよねwあ、私のお弁当にはやめてね(笑)」
バーバラは他人事のようにそう言うと、珊瑚宮さんの箸でその黄緑と赤に混じった汚泥の様なものがかかったおにぎりを彼女の口に運ぼうとしている。珊瑚宮さんが逃げようとすると、もう二人の取り巻きが彼女を羽交締めにした。
「おいおい逃げるなよ。ほれw」
「もう、程々にしときなさいよ?ほら、口開けなさい。」
後ろから取り押さえている方を煙緋、口を無理矢理開けさせようとしている方を刻晴といい、二人とも勉強のストレス解消の為に虐めに加担しているであろう最低の奴らだ。どうやら模試の結果が振るわなかったらしい。

「い、嫌ぁ....ゴホッ...ガボッ...オ" エ" エ" エ" エエ」
珊瑚宮さんは抵抗の甲斐虚しく、形容する事もおぞましいそれを口の中に入れてしまい嘔吐してしまった。辺り一面が嫌な酸っぱい匂いに包まれる。バーバラ達は悪魔の様に笑っていたが、急にバーバラがその弁当箱ごと珊瑚宮さんの顔を殴りつけた。
「ねえ、私の上履きに貴女の汚いゲロがかかったんだけど?...ふざけんじゃあねえぞこのビチグソがあああ!!!テメェみてえな気持ち悪い臭えゴミが私の物にマーキングしてんじゃあねーぞ!?!?」
バーバラは抵抗する気もない彼女を散々殴りつけ、押し倒した。そして子宮辺りの下腹を執拗に何度も踏みつけている。その度に珊瑚宮さんはくぐもった声で呻くばかりであった。
「放課後、最高に楽しい事してあげるから。」
鬼の形相で彼女を睨みつけた後、バーバラは息を切らしながら教室を出て行った。タバコを吸いにでも行ったのだろう。取り巻き達もそれに続き教室を出て行く。
俺はお腹を抑えながら痙攣する珊瑚宮さんに大丈夫かと声を掛けようとしたが、汚物に塗れた彼女を保健室へ連れて行く勇気も無く、晴れた空を眺めていた。