「あっ、司さん……動かないで」
「む、どうした志歩?」
「頭に、蜘蛛が」
「なにぃ!? どこだっ! どこにいるのだっ!」
「いえ、もう取りました」
「え? ああそうか。取り乱してしまった、すまん、震えが」
「……ほら、落ち着くまで手を握っててあげますから」
「うむ、助かるぞ、志歩……しかし」
「なんですか?」
「仮にも世界のスターを目指す者として、こう見苦しいところを見せてしまうのはな……」
「今さらじゃないですか。それに、私にとってはスターであるよりも前に咲希のお兄さんです」
「……そ、そうだったな。ふぅー……よーし、落ち着いたぞ!」
「まだ震えていますけど?」
「だがいつまでも志歩に手を握っていてもらうわけにはいかないだろう。さすがはオレ、気遣いのできる男」
「そういうの自分で言わなければもう少し評価が上がると思いますけどね……別にいいですよ。司さんの震えが止まるまでこうしていますから」
「それはありがたいが……本当に良いのか?」
「嫌ならとっくに離してますよ」