「アロマキャンドル作り楽しかったな。みんなに喜んでもらえて本当によかった。そうだ、宵崎さんにもらったキャンドル、さっそく使わせてもらっちゃおう」
シュボッ

「——あっ!! ど、どうしよう。宵崎さんに火の扱いに気をつけるように言っておくの忘れちゃってた……。不摂生がたたって火をつけたまま寝落ちしてたら……」
「そうだ、メッセージで……『宵崎さん、起きてますか』」
「既読がつかない……。もう寝ちゃった? 作業に集中してるのかな。まさか、家燃えてないよね……!?」
「心なしか、遠くから消防車のサイレンが聞こえるような……。げ、幻聴……だよね」
「…………」


「こ、こんばんは。宵崎さん、いらっしゃいますか……?」
「望月さん? こんな夜中にどうしたの? 忘れ物?」
「よかった……っ! 宵崎さん!」
「え、なに……?」
「あの……大変失礼かとは思うんですけど……アロマキャンドルのせいで宵崎さんのお宅が燃えちゃってたらどうしようって、すごく心配で、つい……」
「それでわざわざ来てくれたの? メッセージでも送ってくれれば……あ、ごめん。見てなかった……」
「い、いいんです! 宵崎さんがご無事ならそれで。結局、余計なお世話だったみたいですし」
「ううん、気を遣ってくれて嬉しいよ。火も気をつけるね」
「はい。周りに燃えやすい物がないか確認してくださいね。それと、眠くなったら火は消すこと。あと、できたら広いお皿に水を張ってその上に乗せて使ってください」
「わかった。色々とありがとう、望月さん」
「どういたしまして。こんな夜中にお邪魔してすみませんでした。わたし、そろそろ帰りますね」
「うん。……あ、望月さん」
「はい、なんでしょう」
「みんなが帰ったあと、ちょっとだけ寂しかったんだ。だから、最後にまた望月さんと話せてよかった」
「ふふっ、また近いうちにお伺いしますよ」
「……うん。いつか、また会おうね」


「……ん……あれ? わたし、いつの間に寝ちゃってたんだろ。そっか、キャンドル焚いてたら眠くなって、そのまま寝ちゃってたんだ。人のこと言えないなぁ……。昨日、宵崎さんにも言ったばっかり……って……いつ言ったんだっけ。夢と勘違いしてる……? わたし、言ったよね……? ちゃんと……宵崎さんに……」


『昨夜、シブヤ区の住宅街で火災が発生しました。火はおよそ20分後に消し止められましたが、これによる負傷者4名、内1名は意識不明の重体——』