おまいら、かあちゃんの歳はいくつだ?俺のかあちゃんは65歳だ。
しかし、癌を患ってしまいもう1ヶ月ほどしか命がないらしい。
告知はしてないが、遅かれ早かれ死ぬことは自分で分かるのだろうね。
俺が見舞いに行くたび、「彼女できたか?」と3回くらい言ってくる。

「あんたのオヤジの息子なんだからしようがない、あきらめてくれ」
なんて言葉が喉元まで出かかってとまるが、俺は結局返す言葉が見つからない。

俺は30歳の神聖童貞。いままで苦手な女は避けて生きてきた。
コツコツ貯めてきた貯金は1000万ほどある。
しかし、かあちゃんの死が目前に迫っているというのに、
何もすることが出来ないこの俺の存在に一体何の価値があるというのか・・・
俺なんてどうせこの先、生きていても独りなのだから
俺の命と引き換えに1年でも2年でもかあちゃんの寿命が延びるのなら
迷わず命を差し出したい、泣きながら真剣にそんなこと考えたりしてな。
でも、よくよく考えてみれば、自分がこの先このままで独りで
生きていって、そして死ぬときは、今の自分のように涙を流して
本気で悲しんでくれる人などいないのだ。

「彼女できたか」

俺の将来を本気で心配しているからこその言葉なのだと思う。
でもなぁ、かあちゃん。ごめん、やっぱりもう手遅れだよ。
俺、気づくのが遅すぎたよ。今から頑張ったってあまりにも時間が短すぎる。
こんな気持ちでこれから笑顔で振る舞うのは辛すぎる。
そもそも、そんな下心を持ったまま女性とつきあえるわけがない。
もし今すぐ彼女が出来たとしても、死を目前に控えたかあちゃんに
逢わせるわけにはいかないだろ?

かあちゃん、他のことならなんでもするから、こればかりは本当許してくれ・・・