画質は「悪くない」くらいだ。PS VRのパネル解像度は、片目で960×1,080ドット。それを両眼で見るので、全体としては1,920×1,080ドットだ。
そのパネルを使い「真っ暗な空間に巨大なスクリーンを浮かべる」わけだから、パネル解像度すべてを映像に使えるわけではない。
そのためどうしても、テレビに比べ解像感は落ちる。さすがにDVD(480p程度)では映像側の解像度不足がわかるが、Blu-rayなどの1080pの画像では、
シネマティックモードでは解像度が不足しているのがわかってしまう。また発色についても、テレビに比べると色温度が低い傾向にあり、ちょっと「幅が浅い」感じだ。
大型テレビやプロジェクターを使ったホームシアターが不要になるほどの画質ではない。
例えば、単純な映像の密度感や発色では、過去にソニーが発売した「HMZシリーズ」の方が上かと思う。

しかし、だ。実際に数時間使い続けると、「それはまた別の話だ」と感じる。そのくらい快適なのだ。何時間かドラマを見た後のことだ。
ふと、あることに気がついた。自分は自堕落に、ソファに肘を突きながら、ちょっと頭を傾けて見ていたのだが、それでも映像はまったく違和感がないのである。
なぜなら、頭の傾きに合わせ、映像がきちんと補正されて見えている、ということだからだ。

過去にも、HMDを使って「目の前に大画面」を謳うAV機器はあった。だがそれらは、「頭の方向=映像の方向」であり、だらけた姿勢では映像が傾いてしまう。
しっかり正面を向いた姿勢で見続けるのはなかなかに疲れるものであり、そこが問題でもあった。
しかしシネマティックモードはVRの応用なので、自分の頭が少々傾いても映像は傾かない。自然な姿勢で見られて、映像に違和感がまったくないわけで、これはとても快適だ。
ガバッとPS VRをつければ、いつでもその場に「大画面」が現れる。しかも、かなり自然に、長い時間使っていても疲れが少ない。
自宅にホームシアターを構築できない人が安価に「大画面の迫力」を得るならば、PS VRは非常に良いものである。

映画やゲームも良かったが、意外に面白かったのが「スライドショー」。普通の写真をシネマティックモードで巨大な表示にしてみたが、妙な迫力があって楽しめた。
なお、シネマティックモードの設定を「小」にすると、頭の傾きの補正がなくなり、映像が常に中央に固定されるようになっている。これはどちらかというと、完全に寝転んでプレイする時などに向いていそうだ。
こと画質面でいえば、「大」設定がもっとも解像感もあり、良い絵になる。パネルの中で「黒の枠に使う」部分が減って映像により多くの画素を割り当てるから当然だ。
とはいえ、見やすさの点では「中」がいいので、本当に好み、というところだろうか。

なお、PS VRでの映像をよく見ると、端は色収差もあり、若干ぼやけている。だが、そこに顔を向けてしっかり見ようとすると、きちんとした画質に変わる。
要は、人間にとって重要な中央の視野を忠実に描写し、周辺は軽くすることで、全体のクオリティを担保しているようである。
これは、レンズの性質を考えても、そうするのが正しい。解析的な目でみればそういう特質が見えてくるが、実際に使っていると、意外なほど気にならないものである。


シネマティックモード悪くないみたいですね(´・ω・`)