それは、S本の一言から始まった。
「どうして、子供から大人まで広く愛されるキャラクターが少ないのか」
S本の素朴な疑問が、SIEオリジナルキャラの出発点だった。
いままでのゲームキャラにないような品質とデザイン。
日常的に使って、「安心」と「快感」があるもの…。それがSIEのキャラの命題として与えられた。
森川くんやトロ、クラッシュバンディクーやまけかっちーなど、従来あるキャラの延長線上にありつつも、
品質的にもアイデア的にも「いままでなかったもの」を。
S本の命題は困難を極めた。
そして、製造部門のスタッフによる企画提案、
外部協力者のプレゼンや試作が多数行われたが、S本は首を縦に振らなかった。
No、No、No…。けっしてありきたりでもないし、一般的な製品としても優秀な物のはず。
しかし、S本は納得しなかった。多くは語らない。ただ品物を前にして「ノー」の一言。
だがそれは、こんなもんじゃないだろ、おまえたち、いつもそう言われているようだった。
プロレスラーとは、ここまで妥協しないものなのか。
スタッフも真正面からS本との闘いを受け入れた。
何度もトライアル&エラーが繰り返され、試作品が作られ続けた。
そしていよいよ完成したキャラ群…。その栄えあるキャラ名として、S本の愛する言葉「ゴンじろー」が採用された。
試合スタイルとして、常にロックアップから始まるS本。
それに合わせて、「完全に押さえ込む」「動けなくする」「成功する」「確実な物にする」等、
言葉そのものが持つ、攻撃的でポジティブな意味が、このブランドの方向性を決定づけた。
ゴンじろー。
それが製品名であり、コンセプトであり、最終形態だ。