病院の一室、私はある少年と話していた。
少年は全身を包帯でぐるぐる巻きにされ、帯と帯の間からは黄色みがかった体液がもれている。
かろうじて顔の隙間から見える少年の目は、熱症で白濁していた。

少年は重度の全身火傷で先日から入院している。
神経は焼き切れているため体は微塵も動かせず、爛れた声帯から放たれるのはうめくほどの声。
コミュニケーションはままならない。

少年はニンテンドーラボVRキットで遊んでいた。
「パオ〜ン!パオ〜ン!」
象のVRが佳境に入った頃、少年は本体に異常を感じたそうだ。

Switch本体の排熱により、VRキットが発火。
それが引火し、少年のからだは火に包まれた。

「任天堂の、…VRは……危険……」

そう言い遺して、少年は天国へと旅立った。




読売新聞