湯浅政明監督(以下湯浅) いまスパゲティとかハンバーグのような、何か誰もが好きになる作品が売れるという感じになっていています。
そうした声が高まって、制作スタッフでも、もっと売れるやつじゃないとといった感じです。 でも僕はハンバーガーとかは作れない。
じゃあ、僕なりのハンバーガーかスパゲティを作らなきゃなと思っていたときに、 何かもっと納豆みたいなものを作ってみよ
うよ、と石川さんから話がありました。 それなら食べやすい納豆を作ってみたいなとの感じで始まりました。
石川光久氏(以下石川) 『キックハート』を作りたいと思ったきっかけは2つです。作家性が強かったり、
クリエイターが作りたいものを作らせるスタジオって、なんだか面白そうですよね。 監督とクリエイターの感性だけ
で作品を創ると、とてつもないヒット作が生まれそうな気がしますよね。 でも、そういったスタジオは、あまり継
続できていないんですよ。クリエイターが作りたいものだけだと、お客さんが面白いというものと違う方向にいっちゃいが
ちなんです。 でも湯浅さんは、「いや、俺は別に作りたいものだけ作りたいわけじゃないよ」と話されたんです。
「お客さんが面白いというようなものを作りたい」と言っていたのが、すごくいいなと思ったんです。 作りたいもの
を作っているわけじゃないというところが、きっかけのひとつです。
石川 もうひとつは、湯浅さんの圧倒的な存在感と実力。これがないと無理なんですよ。 湯浅さんの実績と、それに対す
るリスペクトがあれば、そこに人間が集まってくる。この監督のためにだったら、という人がいるんです。
アニメーションって1人で作るわけでないですから、それに対しての魅力ですね。
石川 それとアニメが、いわゆる萌えやオタク向け作品中心になったときに、市場はどんどん狭くなってしまい、
コアファンのための企画しか通らなくなってしまいます。 その点、湯浅さんを通じると、普段アニメのパッケー
ジを買わない層、アートやオシャレとしてアニメーションを楽しむ層に近づけるんです。商売的にもですね。

「キックハート」で起こったことファン支援はアニメ制作を変えるのか?
湯浅政明監督、I.G石川光久社長インタビュー
http://animeanime.jp/article/2013/04/14/13678.html