2020/04/24 5:20

任天堂がスイッチおよび、廉価版のスイッチライトの国内向け出荷が一時的に止まったことを明らかにしたのは4月7日のこと。その1週間後の4月14日には出荷再開の見通しが立ったとしているが、実際には「供給が需要に追いつかず、店舗販売はしていない」(ビックカメラ)。同じくヨドバシカメラも「入荷数はゼロではないが、ごく僅か。入荷するとすぐ売り切れてしまうので、足元では在庫切れの状況だ」と語る。
新品・未開封のスイッチが、定価3万2978円(税込み)の1.5〜3倍の高値で売買されるケースが横行している。任天堂も頭を悩ませるが、「需要に対して供給が追いついていない以上は仕方がない。1日でもはやく供給量を増やすしかない」と唇を噛む。

2020年の年末には、ソニーの「プレイステーション」やマイクロソフト「エックスボックス」などライバルの新型ゲーム機の投入も控えている。ここでスイッチを増産して、どうぶつの森のブームが一服したあとに供給過剰となるリスクはないのか。
ゲーム業界に詳しいエース経済研究所の安田秀樹氏は「6月までの増産で在庫が積み上がるリスクはほぼない。むしろ、スマートフォン向けの需要が高まるDRAMのメモリなど、一部の部品の調達が思うようにできないことで、1割の増産が限界、というのが現実だ」と見る。

任天堂も、「増産の決定は、2020年度に発売される新作タイトルの需要なども見越したもの」と自信を見せる。2020年1月末に行われた任天堂の決算説明会で古川俊太郎社長は、「スイッチはライフサイクルの中盤」と言及しており、当面は同社の主力ゲーム機となる見通しを立てている。喫緊の課題はやはり足元の供給体制を1日でも早く立て直すことにありそうだ。

ニンテンドースイッチだけでなく、ソニーの家庭用ゲーム機「プレイステーション(PS)4」も一部の製品が品薄になっている。東京都内の家電量販店によると、緊急事態宣言が出た4月7日前後から買い求める人が増え始めた。
4月10日に人気ゲーム「ファイナルファンタジー7 リメイク」が発売になったことで、一気に品薄状態になった。

PSを生産・販売するソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)は「現時点では顕在化している問題はない」としている。
4月に入って品薄となっているPS4だが、複数の家電量販店がPS4の入荷スケジュールは読みにくくなっていると口をそろえる。ある店の店員は「(2020年の年末商戦に投入予定の)PS5を見越して生産台数を絞っているのではないか」と話す。

PS5の発売を控え、PS4本体の売り上げは減少すると踏んでいたソニーにとっては想定外だ。思いがけない特需だったとはいえ、売り上げを伸ばす機会をみすみす逃してしまった形だ。


さらに今後の懸念は、年末商戦に投入するとされるPS5の動向だ。搭載する半導体の性能や、コントローラーなどを小出しに発表しているが、部品などの調達先はほぼ決定しているとみられる。ただ、世界同時発売をするとなると、相当の台数を発売日までに準備しなければならない。サプライチェーンの混乱から「十分な台数を供給できるのか」(部品メーカー関係者)といった懸念は尽きない。

下手を打てば、ニンテンドースイッチのように転売の横行などを招きかねず、複雑な舵取りが求められる。