対戦に逃げてはいけない

宮本 大勢で遊ぶのが面白いなら、オンラインでもっと増やしてみたらもっと面白いと思います。しかし、そういうゲームを作れる人はたくさんいると思うんですね。
自分の作れるものの量って決まっていますよね。だから、任天堂として(オンラインで多人数で遊ぶゲームを)作ることになったなら、「誰かが作ったらいいのに」とか思うかもしれない。それが上手な人はたくさんいるので、僕は「その場で一緒に遊ぶ人たちがコミュニケーションできるゲームを作っていこう」とずっと思ってきました。これからはちょっと分からないですが。

 もう1つは「ゲームデザイナーとして対戦に逃げてはいけない」というのがあります。対戦したら何でも面白いですよね。どんぶりとサイコロが2個あったら、もう無人島にいても大丈夫ですよね(笑)。
人間って不思議なんですけどね。僕はそんなのやってないですけど、例えばサイコロを振ってゾロ目が出たら勝ちとして、100円玉を置いてサイコロ振って、次の人もまた100円玉を置いてサイコロ振って、100円玉が積み上がってきたらドキドキしますよね。

 ゲームデザインではそういうものも利用するのですが、本質的にはその人が面白いものを見つけてきて紹介するというのがゲームデザインと思っています。
だから、任天堂で対戦ゲームを作る時には、「対戦したら面白いから、対戦せずに作れよ。対戦せずに作った方が、最後対戦したらすごい面白くなるから」と言います。
そういう意味では、ネットワークありき、マルチプレイありきを前提にスタートするのは、ちょっと自分の逃げのような気もして微妙なところです。