ソニーが開発しているとみられるPlayStation 5の性能強化版「Pro」モデルについて、新たなうわさや議論が浮上している。マイクロソフトも前世代のXbox Oneでは性能強化版となる「Xbox One X」を発売したが、現行機に同様の計画があるかについてははっきりしない。

最新のうわさでは、ソニーは2020年のPS5発売から4年後となる今年の秋「PS5 Pro」を発売する見通しだとされている。「PS5 Pro」の発表は、来週開催のコンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES)に合わせて行われるとも予想されているが、それよりもずっと先になるとの見方もある。2024年秋発売という情報が正しいかどうかも、現時点ではわからない。

性能面に関しては、ほぼすべてのゲームで60fpsの高フレームレートを目指すものになるとみられる。当然ながら、現世代で最高性能を誇るゲーム機となる見通しだ。そうでなければ、わざわざProモデルを出すことはしないだろう。とはいうものの、PS5をめぐる現在の状況を考えると、たとえ今年Proモデルが出たとしても、PS4 Proの時以上に不要なアップグレードに感じられる。「PS5 Pro」は奇妙な製品となり、ユーザーに買い替えを促すのは難しいだろう。

PS4は販売台数が1億1700万台と公表されているが、PS4 Proが何台売れたのかは不明だ。ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)の吉田修平氏は、PS4 ProがPS4の薄型モデル(通称PS4スリム)よりも売れたと語ったが、公表されている情報はそれだけだ。「PS5 Pro」の開発が決まったのであれば、PS4 Proが売れ行きが十分だったということなのだろう。

ただ今回の場合、大きな違いがいくつかある。

・PS5は発売から2年間にわたり深刻な在庫不足に見舞われ、多くの人が購入できない状態が続いた。そのため、オリジナルモデルの発売からProモデル発売に至るまでの期間が、PS4の3年よりも長い4年となるとしても、多くの人はアップグレードには早すぎると感じるかもしれない。

・逆に、現世代のゲーム機が登場して4年経ったことで「PS5 Pro」を買うよりは「PS6」を待った方がいいと感じる人もいるかもしれない。特に「PS5 Pro」での性能強化がゲーム自体に変化をもたらすようなものでない場合、現時点で何ら問題なく動作しているゲーム機をアップグレードさせるのは難しい。新規購入者であっても、標準モデルがProモデルよりもずっと安く買えるのであれば、購入のモチベーションは低くなるだろう。

・また、人々はこのところ、大幅な物価上昇に見舞われている。PS4 Proの米国での価格はPS4と同じ400ドルだったが(編集注:日本での価格は、PS4が3万9980円だったのに対し、PS4 Proが4万4980円と約5000円高かった)、「PS5 Pro」の価格設定は今のところはっきりしない。オリジナルモデルの価格は、ディスクドライブなしのデジタル・エディションが450ドル(日本での価格は3万9980円)、ディスクドライブ搭載の標準モデルが500ドル(同4万9980円)だった。最近登場した新型PS5は、デジタル・エディションが450ドル(同5万9980円)、別売りのディスクドライブが80ドル(同1万1980円)。「PS5 Pro」は最低でも500ドルになりそうだ。

・最後に、現在のPS5世代は、独占タイトルをめぐる状況が少し奇妙である点を指摘したい。『Horizon Forbidden West』や『ゴッド・オブ・ウォー ラグナロク』のような大作の多くは、PS4でも発売された。すでに1億1700万台が売れたPS4の所有者を反故にしたくなかったのだろう。PS5専用の大作ゲームは数えるほどしかなく、その中でも最大のタイトルが昨年の『Marvel's Spider-Man 2』だ。今年はというと、めぼしいタイトルは『FINAL FANTASY VII REBIRTH』くらいと、若干寂しい状況になりそうだ。今後、新たなタイトルが発表されるかもしれないが、少なくとも現時点では、PS5から大きな恩恵を得られると感じられるゲームはほとんどない。

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