十時社長も「PS4、もしくはそれ以前に比べるとチップシュリンクの恩恵をなかなか得られなくなる。したがって、コストダウンも難しい」とする。

この点は、新型PS5が出たタイミングで、本連載において「ゲーム機は待っても大幅には値下げされない理由」として解説している。

これらのことから、「PS5のビジネスモデルが行き詰まっている」とみる向きもあるようだが、それは少々単純な見方ではある。

こうしたコスト構造になっていくのは前の世代から十分にわかっていたことで、ソニーもよくわかっている。それを理解した上で、ネットワークサービスやゲームのダウンロードコンテンツといった「サービス収益」を重視するようになったのだろうし、価格が下がらないといっても、ゲーミングPCがPS5などのコンソールと同じような価格帯に落ちてくるわけでもない。

いかに底堅い収益を確保し、安定的なプラットフォームビジネスとするかが、今後のコンソールビジネスにとっては重要なのだ。過去のように、「大きな赤字が出るがライフサイクル後期には驚くような収益が見込める」というモデルを描くのではなく、「最初からシュアなビジネスを目指し、いかに安定性を長期的に確保するか」が大切になっている……といってもいいだろう。

十時社長は、今年4月からソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)の暫定CEOに就任する。そのため、SIEのビジネス状況を改めて精査しているとのことだが、「より収益性とユーザーエンゲージメント、販売数量のバランスをとってビジネスをしていくことが重要」(十時社長)としている。


ビジネスが好調である理由として、ソニーGはPlayStation全体のユーザーエンゲージメントが拡大していることを強調
開発段階での収益性について見直しも行なわれていくと考えられるが、そのためにも「無理をせず台数は増やす」路線が大切、ということになるだろう。

昨年11月14日に開催された'23年度第2四半期業績説明会では、「(PS5の年度内2,500万台出荷という)目標はかなり高いものであることは事実。実現に努力するが、利益を無視してまで実現することはない」(十時社長)と語っている。

実際、今期の値としては820万台の販売にとどまり、期末に2,500万台を達成するのは難しい。これをPS5の限界と取るか、「濃いユーザーが集まった市場」と見るかは立場によって違いそうだ。

https://www.watch.impress.co.jp/docs/series/nishida/1569693.html