──そもそも「作品」であることに閉じこもらず、売ろうという気持ちはある。
さらに、独立をしたことによって、会社の論理だったら間違いなく“続編をやった方がいい”という判断になってしまうようなときでも、「作品」の部分を優先できるような選択の自由がある、ということでしょうか。

小高氏:
 そうです。その意味では、スパチュン時代に「『ダンガンロンパ』を自分の作品だと本当に心から思えなかった」というモヤモヤとした気持ちがどこかにあって。
よく作品のことを「自分の子どもだ」と言う人がいますけれど、当時の僕は、あまりそうは思えなかったんです。
 やはり、規模が大きくなればなるほどに、ビジネスの都合でグッズ化やパチンコ化といった展開が進んでいく。もちろんIPは会社のものだから、自分の知らないところで進んでいくのは、当たり前のことではあるんです。

 でも、そのことを理由に、心のどこかで「まあ、俺のもんじゃないしな」みたいに投げちゃう部分がなかったか? ……そう問われると、本当に心から「なかった」とは言えない自分がいました。
 そうした気持ちがあったときに、独立して自分たちで責任をとる体制になることで、作品に対して“もっと真摯な気持ちで関わってみたい”と思ったんですね。


──作ったものに対して、ちゃんと当てるというような「商品」としてだけでなく「作品」としても責任を持ちたい……ということですかね。

打越氏:
 続編の話で言うと、つい最近「Telltale Games【※】がなぜ倒産したのか」というYouTube動画が話題になっていて。その動画によると、彼らは2007年とかにベンチャーキャピタルからけっこうな額のお金を借りて、『The Walking Dead』を爆発的に売ることに成功した、と。
 でもその後は、借金のプレッシャーによって、結局毎年新しいシーズンを出さざるを得なくなった。すると、当然クオリティーが下がって、レビューも下がって、売り上げも下がって……という悪循環に陥っていった、ということを言われていて。

でも、きっと僕らはそういうことにはならないんですよ。もしAAAクラスのタイトルを手がけていたら「この人に頼むんだったら、予算は膨大だ」と思われちゃうし、それに応えようとしてしまう。
 でも僕らは、A〜AAあたりに位置しているので、敷居がほどよく低い。そのポジンションであるおかげで、7人という小さなチームでかなり自由にやれるわけです。

小高氏:
 要するに、一番わがままな選択なんですよね(笑)。“商品として成功したい”だけでもダメで、“自分らの作品を作りたい”というだけでもダメ。
 そうじゃなくて、「自分らの作品を作ったうえで、商品として成り立たせたい」と、そんな、かなりわがままなことを求めたら、“独立しかなかった”んだと思います。
http://news.denfaminicogamer.jp/interview/190110