小人の国は切手とビー玉によってすべての取引が行われていると言われる
火星からの憶測であるが月の兎たちも口々にそう言っているからたしかだろう
蟹の殻にまどろむ星たちの流砂が火を灯して彼らだけの密語を交わしている
それを隠れて聞いていても我々にはとうてい理解できるものではないのだが
結局金星のマチエールは隣の家のきな粉餅とそう大差はないと母も言っていた
恋する女の赤い唇を知らないでホテルへ向かう灯台守の歩容にしても
しかしながら市から市へスカートを脱がせて闊歩するさまは壮観であり
儲けの金をありったけかき集めてクスコの煙突掃除人は
蒸気船に一銭を投げ与えてメリーゴーラウンドをくるくる旅する
その雌馬の蝸牛は瑪瑙のビー玉やヴィオロンセロより一層美しい
だがそれをいつまでもそれを書き留めているのは象牙の怠慢である
街の人々は道路でシャーベットをシャリシャリとしゃくって幸せそうだし
ゴモラとソドムの紛らわしい悪徳が引き起こした手違いで悪人は救われる
何でも意のままになるならみかん畑の少年たちでもやろうものだが
宿題もまだ終わらぬ木枯らしの吹く秋へ紡がれる歌はもはや止められず
海の遠く懐かしい響きを愛するのは海釣りする少年たちも同じである