戦闘服に戦闘帽、黒い編み上げブーツ。右翼活動家としての、それが彼女の"正装"だ。

仲村之菊(みどり)。38歳。──右翼団体「花瑛塾(かえいじゅく)」(本部・東京都)の塾員である。同塾では"副長"の肩書を持つ。

その日も、仲村はたったひとりで沖縄の米軍基地ゲート前にいた。

"コワモテ"をイメージさせる装いだが、上半身を包むトレーナーには「米国の正義を疑え!!」という文字がプリントされている。

彼女は基地と道路の境界線を示す"イエローライン"に仁王立ちした。脇に抱えたトラメガ(拡声器)のスイッチを入れると、米軍基地に向けて、恒例の街宣活動を始めた。

「私の声に耳を傾けてください」

穏やかな声だった。よくある絶叫調のアジ演説ではない。

一語一語を丁寧に区切り、目の前の人に語りかけるような口調だ。

「私は沖縄の美しい海を守りたい。森を守りたい。子どもたちが安心して生きていける沖縄であってほしいと思っています」